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新世界 / 感想・レビュー
クリママ
ロスアラモス研究所。オッペンハイマーなど実在の人物。原爆の開発目的や原理の説明。研究所内で被爆した人の死に至る様子は「青い閃光」で読んだ状況そのまま、後半の原爆投下後の広島の様子は、井伏鱒二、林京子、大江健三郎等の作品を参考にしたもので、以前読んだことがある記述でもあったが、アメリカの原爆投下の正当性を主張する軍関係者や科学者等と対比する形で描かれ、放射能でもたらされる死と私たちが漠然と考えている死の違い、兵器の一つとはいえ原爆と他の兵器のあまりにも大きな違いを再確認し、戦慄した。
2018/02/24
みぃー
昨秋、私は初めて広島に行った。以前から行きたいと思っていた場所へ向かった。原爆ドームを言葉も出せずただひたすら見つづけた。原爆資料館で息をすることも難しいほどの気持ちになった。この本を読みながらその時のことが何度も何度も頭に浮かんだ。ーーこれがわれわれの新しい世界なのか?ーー
2018/02/15
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
終戦直後のロスアラモス研究所で起こった殺人事件を軸にしたミステリーではあるが、その謎解き以上に、原爆の開発に携わった科学者たちの狂気ともいえる心情が印象に残る。ナチスドイツに対抗するためとはいえ、極端に低い確率ながらも世界を焼き尽くす可能性のあった実験に着手したり、広島・長崎の惨状を目の当たりにしてもなお強力な爆弾の必要性を説いたりする科学者たち。史実をモチーフに筆者が描いた世界は、いまにつながる問いかけでもあり、いろいろと考えさせられる。重い内容ではあるけれど、長く読み継がれてほしい一冊だと思う。
2011/04/22
そうたそ
★★☆☆☆ いつもながら柳さんの作品はミステリという形をとりながら作品の本質はそこにはない。史実をうまく利用しながらも、作者自身が上質なフィクションに仕立て上げている。本作もその例に漏れない。この作品では「原爆」がテーマとして取り上げられている。原爆投下について。開発者である科学者たち、もしくは実際に投下したパイロットらは何を思うのか。そこには悔悟の気持ちはあるのか。一応、殺人事件の謎解きという形はとられるが、原爆に関する記述を読んでいるとそちらに集中してしまう。多少ゴチャゴチャし過ぎかとは思ったが。
2013/09/26
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
作家である柳の所に持ち込まれた1冊の本。それは原爆の開発責任者であるオッペンハイマーが友人の科学者であるイザドア・ラビの視点で書いたというものでした。内容は終戦直後の砂漠の町ロスアラモスで起きたある殺人事件に関するものでしたが・・。とても重苦しい話でした。犯人探しが主軸というよりも、原爆を落とすということを原爆を作った科学者たちや実際に原爆を運んだパイロットがどう感じたのか、心理面に焦点をあてた話だなと思いました。被爆シーンの描写にはホントゾッとしました。★★★★
2010/04/03
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