群狼の舞―満州国演義〈3〉
群狼の舞―満州国演義〈3〉 / 感想・レビュー
キムチ
ボリュームを感じないほどに展開に没頭してしまった。満州国の設立、文中では日本の婚外子的な表現で述べられる。石原莞爾の名前が躍る。して時代は日中戦から国際戦への移る影が。ヒトラーの存在が浮かび上がってきて無気味な臭い。太郎は日本の外郭的存在、三郎は日本の内面的苦悩、四郎は日本の病める部分の・・次郎は日本の陽が当っている部分の象徴の人格を感じた。満蒙開拓団という砂上の楼閣と娘子軍。食に餓え、生と死のはざ間での時間が日常的になるとこうも性がむき出しになるのか・・・日本鬼子という言葉。チリチリ、響く。
2014/11/18
KAZOO
満州国建国に向けての敷島四兄弟の動きやそれを取り巻く人々の動きがかなりきめ細かく活写されています。普通の歴史の本では味わえないロマンというものを感じてしまいます。私はコミックで村上もとかさんの「龍」を愛読していますがそれに通ずるものを感じています。
2014/06/17
いくら
ついに満州国建国へ。国際的にはリットン調査団が満州入りをし、結果日本は国連脱退への道を進む。そうしたなか外交官としての太郎の意識が少し軍部寄りへと変化していき、三郎は妻帯してなお憲兵の職務にまっとうする。またしても一匹狼となった次郎は相変わらずの無聊ぶり。情に厚いところも健在。四郎も渡満することになるが、四兄弟のアキレス腱的存在です。そして今まで不気味な動きを続けていた間垣の正体が少し明らかになる。薄暗い影を落としつつ4巻へ。
2014/05/02
藤枝梅安
物語は昭和7年3月から始まる。敷島四兄弟それぞれの視点から満州国建国から国際連盟脱退に至る動きを追いつつ、四人の間を往き来する間垣徳蔵。史実を基に書かれているため、スイスイ読めるという小説ではない。敷島四兄弟は運命に導かれるように満州でそれぞれの任務・役目を負い、次第に互いの動きが一つの終末へと収斂していく予感を読者に与える。この巻では第一巻の冒頭に出てきた明治維新期の会津戦争への言及が違う人物を通してなされるところに注目したい。なお、274ページ16行目「四郎は・・・」は明らかな誤記。「三郎」のはず。
2010/09/18
NAO
ついに、満州国建国。国際世論を満州から逸らせるために日本が起こした上海事変。その膨大な軍事費が、日本経済をひっ迫させる。国際的に孤立し、経済的にもあとがない。この暗さと狂気の中で、敷島四兄弟の人格は変っていくのだろうか。見たいようでもあり、怖いようでもある。四兄弟という主人公を得て、満州の歴史をこんなにも生々しく感じることができるとは。
2015/06/18
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