炎の回廊―満州国演義〈4〉
炎の回廊―満州国演義〈4〉 / 感想・レビュー
キムチ
後半は2・26事件への収斂。統帥権干犯問題を種々の観点から語らせている。「今でも遅くない・・」の有名なメッセージが。筆者の巧さに改めて感嘆。筆者が想いを入れて描くのは次男のように感じたが4兄弟其々「皇国日本」の一人。想いは同じながらそれぞれに満州国という鬼子に傷付きつつ関わる。硬軟絡めてそれぞれの人格を俯瞰する手法も面白い。東條のルーツを初め、初めて知る事実も意外性があり、当時の日本が単なる熱病でなくじりっと「その日」に向かって行くさまが映像のよう。満州での中国や朝鮮での暗躍闘争も生々しい。
2014/12/10
藤枝梅安
この巻は満州帝国への移行が行われた昭和9年3月から始まっている。敷島家の四兄弟の活動が点描され、それが次第に繋がり、織物のように日本の歴史を読者に見せてくれる。太郎と三郎が組織の中で次第に力を蓄えて行く様子と、次郎と四郎が表向きはフリーランスだが、その時々に応じて自分のスタンスを変えざるを得ない状況が対比され、組織の中での苦労と、自由人としての苦悩が対照的に描かれている。しかし、次郎や四郎の「自由」も満州の人々の犠牲の上に成り立っていることを、この二人が自覚している点が、この小説の重要なポイントだと思う。
2010/11/10
いくら
抗日運動が激しくなり、国内では二二六事件が起き敷島四兄弟の行き先に暗雲がたちこめる。満州や中国だけでなくロシアにモンゴルにインドと当時の政治的背景が詳細に分かり読み応えあり。硬い部分と次郎の活躍する劇画っぽいところとがバランスよく描かれて飽きずに読める。
2014/05/07
KAZOO
この巻は2.26事件が後半の中心になっています。4巻まで読んでなぜ作者が4人兄弟を主人公にしたのかがわかる気がしてきました。満州国の発生から終焉までを描くために、長男(外務省の役人)の視点、次男(満州馬賊)の視点、三男(満州憲兵隊)の視点、四男(風太郎でふらふらしている)の視点、それをつなぐ特務任務の男、という事であらゆる視点から満州というものを見つめようという事なのでしょう。昔読んだ本で満州というのはキメラという怪獣になぞらえられると記していました。確かに一つの視点で分析するのは無理なのだと思いました。
2014/06/18
NAO
満州の日本人移民たちは、満州は日本の一部だと思っているから、満州国の国籍を持とうとしない。国籍法が成り立たたないため憲法も制定できないような満州に建国の夢を感じている敷島太郎の政治感覚は、どうなっているのだろう。太郎は、すでに、外交官としての公正な目を失くしてしまっているようだ。自由を求めて大陸を放浪する次郎には、関東軍特務の手が伸びている。次郎がいつまで自分の意志で動いていられるのか気になるところ。堅苦しい政治の話が続く中、次郎の動きは息抜きにもなっていたから、いつまでも自由に動いていてほしいのだが。
2015/07/02
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