エスケイプ,アブセント
エスケイプ,アブセント / 感想・レビュー
里季
絲山さんを読みたくて図書館の書架にあったものを借りてきた。「おれ」のエスケイぷと「あいつ」のアブセント。短編2編のように見えて実は一つの物語。京都の町のごちゃごちゃ感がいい。最近読んだ「離陸」のような時空間の距離のようなものが感じられて何とも言えない読後感だ。ほかの作品も読んでみたい。
2014/12/29
なゆ
元活動家の正臣が、これまでの自分を思い返しながら、京都へ逃避のような旅をする「エスケイプ」。こんなにも共感しづらい主人公のだらだらした話なのに、テンポよく気持ちよくぐいぐい読めてしまう絲山マジック。京都で出会ったコスプレ神父バンジャミンや、歌子ばあさんがどこか魅力的だからか。途中から気になる、誰かとの脳内会話と誰かの不在。それが、「アブセント」に繋がる。きっとまた会えることはないんだろうけど、だけど、と思わせてくれる終わり方。それにしても、どっちもいい歳してダメ男なところがねぇ。。。
2014/12/17
野のこ
おれのしゃべり口調や、ことば遣いがちょっと悪いのに嫌な印象がなくリズミカル。やんちゃそうでも、情の深さは、だだもれ。京都の街並みが生き生きしてた。後半はもうひとりの双子。電車に乗って旅のように開放的な時を過ごす、片道ぶんのチケット、この先どんな線路になってるんだろう。居酒屋で、それはおれじゃない!って興奮してるくらいやし、二人がいつか出会えるといいな。4年の時間差があるのはニクいと思いました。
2017/12/04
spatz
テーマは「不在」なんだろうか。ずっとあっていなくて、互いの不在を意識しながら、たぶんどこかですれ違いながらも出会わない兄弟、双子。急行銀河!乗ってみたかった列車だ!淡々とすぎる物語。京都でであうキャラが不思議で面白い。ニセ神父。コスプレ神父。二編とも最後の場面の描写はあきらかに重ね合わされている。比叡山から琵琶湖を見下ろす正臣と、琵琶湖から比叡山を振り返る和臣と。
2017/05/29
おさむ
読み落としていた2006年の絲山作品。女性なのに、なんでこんなに中年男性の心情を書くのがうまいのか。前世はきっとオトコだったんだろうと思う。読んでる途中、長嶋有かと錯覚しました。そんな彼女の作品の特徴はやはり旅と音楽(ロック中心)。それは人生にとって不可欠なものなのかもしれない。訪れた先の地方都市の描写がいつも見事だが、本作の京都と博多も情景が目に浮かびます。「遠い旅に出るときって、自意識過剰になるもんなんだ」。そんなセリフを味わいながら、今回も絲山ワールド堪能いたしました。
2021/06/03
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