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不愉快な本の続編

不愉快な本の続編

不愉快な本の続編

作家
絲山秋子
出版社
新潮社
発売日
2011-09-30
ISBN
9784104669059
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不愉快な本の続編 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

そもそも「ボク」は、この物語を誰に語りかけているのだろう。共感者を想定しない、あるいは必要としない語りなのだろうか。ムルソーのそれがそうであったように。故郷を喪失したボクはあちこちを彷徨う。どこにいてもボクは漂泊者だ。それぞれの地は、ボクにとっては仮初の地であるに過ぎず、ボクを受け入れることがない。ボクが主体的にそれを拒否する以前に。女との関係性もまた、どこにも定点を結ぶことがない。それは、プラハのユダヤ人社会に生まれながら、ドイツ語で小説を書き続けたカフカの彷徨を思わせもする。小説掉尾の1文は凄い。

2015/10/17

おしゃべりメガネ

不思議な魅力、雰囲気を醸し出す絲山さん作品ですが本作はこれまで読んだ作品の中でも特に'不思議'な作風でした。まず、タイトルの意味が不思議なのと、タイトルと作品の中身がリンクしてるのか、してないのか正直、自分にはさっぱりでした。しかし、これまた不思議と手に取り、読み続けてしまう絲山さんワールドで、どこかポップというかファンキーな感じのする作品です。ボリュームの薄さもある意味、魅力でサラッと軽く読みたいトキにはちょうどいい作家さんの一人かもしれません。なんだか知らないうちにひきこまれ、気づけば読了してました。

2017/10/24

風眠

その日暮らしで地方都市を転々としながら、ダメ男が口からでまかせ言うみたいに語った小説。しかしその語り口がまた、意外にも鋭かったり的確だったりして。読みすすめていくほどに、どうしようもなく失われていくもの、どんどんと孤立していく男のセンチメンタルが強くなっていき、何だかこのダメ男に置き去りにされていくような、そんな感じにさせられた。ラストシーンはまさに文字でしか表現しえないと思う。この小説を書ききった作者の強靭さに拍手をおくりたい。

2011/12/24

bura

結論から言うと出口がない小説だった。一人語りとテンポの良い会話。いつもの糸山作品のようにスラスラと読んでしまったがこれは紛れも無く不条理な物語。主人公は自らを「嘘つき男」と称しフランス留学後に東京で女のヒモとなり、金貸しとなる。新潟で恋に落ち結婚するが破局。富山では美術館のジャコメッティの彫刻に惚れ込み身を委ねる。そこに昔の女が現れて…。どこまでが本当で嘘なのか?「オレも太陽が見てえ」まさに異邦人である。一人語りの言葉で男の諦観めいた話に巻き込まれている内にスルリと幕は降りてしまった。…油断した。

2022/06/15

キムチ

続編・・とはいえ前篇知らずとも絲井メロディーは堪能できたし、乾君のニュアンスも納得はできないものの、受容はそれなりにできる。これはフィクションと割り切り、「不愉快、怒り、諦観」の感情が漂う文学と思えばスルーできるけれど、身近がこれじゃ、やりきれないな・・なんてふと思う。章の名の付け方、地図、センテンスの区切りの小気味よさはむしろ楽しさを感じる。とは言え読み手の気持ちバケツに受け入れ容量が減ってきていたらしんどいだろな。富山、呉の描写は切り取った画面とはいえ、切り口のシャープさにくらくらしてしまった。

2015/06/26

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