KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

海松

海松

海松

作家
稲葉真弓
出版社
新潮社
発売日
2009-04-01
ISBN
9784104709021
amazonで購入する

海松 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

サンタマリア

短編集。表題作の『海松』が一番良かった。本を開くと自然豊かな志摩半島の情景が目に見える。それに見惚れてしまい、自然が発する比喩という〈聲〉に耳を傾けることがおろそかになってしまった。あまりにも鮮明なせいだ。雉も、蛇のぬけがらも、猫も、行ったことのない灯台も。全てが鮮明だった。だったら〈聲〉が聞こえてくるまで何度でも読み返せばいいかな。『海松』はなにも変わることなく本棚におさまっている。

2021/12/30

majsan

久しぶりに今の自分にピッタリと合う、共感できる本を読んだなぁというのが率直な感想です。最近若い人が主人公の本を続けて読んで、自分と全く関わりのなかった世界の話が多かったので、この本を読み終わった時には、いい本に出会ったなぁと嬉しくなりました。別荘生活なんてきっとこの先もすることはないだろうけれど、土のやわらかな匂いとともに自然を堪能する悦びを味わわせてもらった気分。

2014/02/17

ゆうゆうpanda

「海松」東京の生活に疲れ、志摩半島に別荘を構えた中年女性。家を整え、家の回りに生えた果実でジャムを作る。飼い猫共々自然に馴染んでいく様子が丁寧に描かれる。「光の沼」親しんでいく対象は家の下の沼地へと。この二編は作者の実体験だろう。その熱中ぶりに驚かされる。作者の五感を通して、半島の家の住人になった気持ちがする。続く二編は創作。同じ半島の家を舞台にした「桟橋」。男との関係に悩んでいる「指の上の深海」。どちらも不倫の話だが、女性の心理にリアリティーがあり、惹かれるものがあった。

2020/03/15

Roy

★★★★★ 気分が鬱々としている時に光を見ると、その光がとても眩しくて、光自体が神であるかのような錯覚を起こすことがある。人間達はどうにもこうにも逃避的であるのだが、自然の美しさは堂々としてその場からの逃避を嫌う。この小説では、物体や生物の素朴な素材に燦々と陽が注がれ、素材に陽が当たるということは影が出来るのであって、その影からは腐食していくような生々しさをも感じさせる。だからとても美しいのだ。素材が集まって生活となる。その営みがどのように見えるかは自分次第であり、見る自分自身の状態も自分次第である。

2009/05/22

スパイク

短編4編。はじめの2編は、「半島へ」と同じ味。あとの2編は半島にもなかった艶っぽいお話し。どっちもよかった。どっちが一般受けするかっていうと、もちろん後のほうだろうし、私もドキドキするの好きなんですが、始めの2編の良さがわからないようでは、まだまだコドモです。私も、コドモから抜けだせていないのでエラそうなことは言えないですし、たぶん20~30代に読んでたら「はぁあ?」ってな感想になったと思う。でもそんな20~30代の頃には、本心から好きだといえる生活に飛び込んでゆくオトナの”本物の”勇気はなかったと思う。

2014/09/01

感想・レビューをもっと見る