いつか響く足音
いつか響く足音 / 感想・レビュー
ゆみねこ
老朽化の進む東京郊外の団地に住む一人暮らしの人々。ここで暮らしているのにはそれぞれきっかけがあったり、はからずもここにいるという流れがあったり。猫がたくさん居着いている場所なら、私も住んでみたいと思った。
2013/01/20
nyanco
古びた団地でに住む彼らの日常は、きらめくものではなく、どちらかというと淀んでいる。どこにでもいそうな人達だが、誰も知らない苦い過去を持ち、秘密と嘘を抱えてこの団地に辿り着いた。いびつな家族関係しか持てなかった人々、人と巧く関われなかった彼ら。そんな彼らの話が連作短編でつながっていく。柴田さんらしい「人間」が描かれた作品で、ひとつひとつは読みやすいのですが、抱えている問題は重く、胸にずしりと響きます。しかしエピローグで光が見えます。書き下ろしで加えられたエピローグのおかげで後味が随分と違うものになっています
2009/12/02
だんたろう
前半は波瀾万丈な感じで、後半にはやけに落ち着いていく。古い団地が抱える問題と、その場所の不思議さが、面白いような切ないような。再生とは、壊して作り替えることではなくて、人の気の持ちようを変えるだけで成し遂げられるのかもしれない。ひとりよりもふたり、多くの人の気持ちが変われば、どんなものでも再生できるかも。技術論じゃなく、精神論というのも寂しいが、両方が必要であって欲しい。自転車も、人間も、世界も、宇宙も、全てバランスで回っている。ひとりでは取れないバランスも、ふたりなら取れるかもしれない。
2013/08/04
daubentonia
時代に取り残され、ひっそりと佇む団地…。そこに1人暮らしする住人達は問題や悩みを抱えていて、社会との間に見えない壁を感じながら暮らしています。住人達の話を聞いていると、段々気持ちが重くなってしまいます…。だけど、この団地には現代の日本人が失ってしまった生活が残っていました。隣人との会話や家族の様な親密な付き合い、なんだかホッとできる生活がこの団地にはあるのです。その生活を望むなら団地に住み続ければ良い。社会へもう一度戦いに出る時は、団地での生活が後押しになるはず。ささやかな希望が感じられる作品でした。
2013/04/12
むつぞー
それぞれ短編としても楽しめましたが、バトンがわたる毎に、あの場面でこの人はこんなことを考えていたのかといったことも判り、そのあたりがなかなかリアルでもあって面白く感じました。心に抱えるおもりはもしかしたら、かなり身近なもので、それがハリのない淀んだような生活を生んでいるのが、本当に近くにありそうな分、語られた本音にドキリとしたのです。
2009/12/20
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