ナボコフ・コレクション 処刑への誘い 戯曲 事件 ワルツの発明
ナボコフ・コレクション 処刑への誘い 戯曲 事件 ワルツの発明 / 感想・レビュー
ケイ
『処刑への誘い』カフカの「審判」と状況設定は似ているが、貫くのはクンデラの「冗談」にみられるもの。ボルシェビキ体制から逃れて15年後で、ナチ体制歓迎が最高潮だった時期にベルリンでロシア語で書かれた(英語用の序文での本人筆) 。冗談ではおそらくすまないであろう時代の風潮をこう書いたかと感服。何度も読みたい。戯曲『事件』ドキドキさせてふっとそらす。うまいな。ナボコフは戯曲もいい…と思ったら、2つ目の戯曲『ワルツの発明』は、スピリットはわかるが、チェーホフならこういうのをもっと簡潔にピリッと書くだろうと思った。
2018/04/30
erierif
『処刑への誘い』ナボコフ による不条理、メタ小説。カフカ的である日、なんの心当たりもなく死刑囚となり投獄される。主人公以外の人物はみな奇妙でかけらも好感をもてず…正直、読んでて辛い。ナボコフを好きでもなかなか読み進まず苦しかったが主人公の書いた一言に、胸を打たれた。分かりにくくはぐらかすように描かれたのは政治が絡んでいたからだろうか。ラストまで異色であった。戯曲『事件』ドタバタ的なお話。戯曲『ワルツの発明』冒頭から大臣と部下のやりとりが気持ち悪く権力者への不快感を見事に表現されている。(続
2018/07/31
masabi
【概要】ナボコフ・コレクションとして、「処刑への誘い」「事件」「ワルツの発明」を収録する。【感想】いずれもナボコフがロシア語で創作していた時代の作品で、目当ては「処刑への誘い」だったがどの作品もおもしろかった。認識論的卑劣さの咎で死刑宣告を受けた男の顛末、危うい夫婦関係に止めを刺した復讐に怯える夫、新兵器を通じて描かれる権力者への皮肉。
2023/03/14
井蛙
『処刑への誘い』。あたかも死を宣告された瞬間から、彼は余人とは別の言語をしゃべり始めたようだ(これは別の言語をしゃべっているから死刑に処されるということと、おそらく同義である)。それゆえ死刑囚である彼に提供される最上級のユマニスム的待遇は、ユマニスムのパロディに堕してしまう。そればかりでなく、彼がついに死刑囚に特有のあの思弁の中で、不可避の運命としての死を見出すとき、世界は自らが書割りに過ぎないことを暴露し、脆くも崩壊してゆくのである。ちなみにこの作品は『審判』とは一から十まで全然違う(主人公の名前だけ→
2020/02/06
緑虫
処刑への誘い ★★★ 地球上のどこかの国で「認識論的卑劣さ」というよくわからない罪で死刑になる人の話。ナボコフが後に語ったことによると西暦3000年のロシアが舞台らしい。カフカ『審判』が思い出されるわけだが、ナボコフは特に参照していなかったとのこと。最後メタフィクションっぽくなる。物語の舞台が固定的で演劇的な印象。戯曲2篇と抱き合わされているのもうなずける。 事件(戯曲) ★★☆ 刑務所に服役してた人が復讐に来るのにおびえる話。フリースタイルラップ調で話すジプシーのおばあさんが出てくる。
2018/04/05
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