熱帯雨林の彼方へ
熱帯雨林の彼方へ / 感想・レビュー
ヨコツ
これは僕の生涯の十選に入るであろう傑作。マジックリアリズムの体をした風刺小説であって、エンターテイメント作品でもあり哲学的問いかけでもある。おもちゃ箱を引っ繰り返したように次々と現れる奇妙な人々の波瀾万丈な人生を目が回るような慌ただしさで見て回るのが全体の流れなのだが、そんな物語は終盤に差し掛かると、さらにその回転を早めて次々に幕が降ろされてゆく。それがまるでサーカスの終わりのようサウダーデを伴う読後感に繋がるのだ。ラストの掌から砂粒が零れ落ちてゆく様な感覚は『百年の孤独』にも通ずるかも。大変気に入った。
2014/07/04
翔亀
【シリーズ森10】ブラジルが舞台でこの書名なので、熱帯雨林を探索する冒険ものだと思い込んで読んだら、全くアテがはずれた。奇想天外なSFファンタジーだったのだ。しかし米国の高度資本主義を皮肉りながら、やはりその経済に毒されながらも、大地に着いたブラジル人とブラジル移民の逞しくもかつ軽やかな生きざまに、なるほどラテンアメリカ的だと思わずにいられなかった。熱帯雨林は、現実の森としてではなく、最終的に全てを呑み込む寓意として描かれるのだ。大量生産大量消費という現代人の狂騒の果てに、それでもなおその廃棄物を呑み↓
2021/04/12
三柴ゆよし
魔術的リアリズムってなんか内輪ネタ臭い。本書の場合そうではなく、物語中盤から謎の物質マタカン目指して進出してくるcapitalismの存在が、この物語を単に第三世界の不思議を描いただけの量産型マルケス小説ではなく、もうすこし外部に対して開かれた小説にしていると思う。頭にボールをつけた日本人とか三つの腕と乳房を持つ男女のロマンスとか万病を癒す鳥の羽とかいうサーカス要素は満載なのだが、それらすべての要素が資本主義の渦に巻き込まれて数奇な運命をたどることになる。個人的には結構悲しい小説で、読了後、思わずため息。
2014/08/25
かわうそ
アマゾンの熱気を背景に強烈な個性をもった人々の奔放な振る舞いがごった煮になって陽気で混沌としたストーリーを紡ぎ出す奇想天外なファンタジー。破天荒さと繊細さのバランスがいい感じで非常に面白かったです。
2014/07/30
nbhd
シンプルな感想をいえば「奇妙で、おもしろい。そして、せつない。」これはマザー3のキャッチコピー(糸井重里)だけれど、けっこう的を射ている気がする。語り手がボール玉(すてき!)、羽を崇拝する宗教、3本腕の男におっぱい3つの鳥類学者などなどヘンテコのオンパレード。だけど作品の手ざわりはマタカンよろしくプラスチック質で、マジカルな世界に浸食してくる「資本主義」が真の主人公として迫って来る。ラストのカタストロフより、あらゆる不思議な出来事が、資本主義的なシステムに巻き込まれる様が可笑しくも切なくひびいた。
2014/08/31
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