ムーン・パレス
ムーン・パレス / 感想・レビュー
まこみや
30年振りの再読。尤も読んだ記憶すらすっかりなくしていたのでほとんど初読のようなものか。ジャンル的には青春小説、成長小説、恋愛小説と括ることができるだろうが、再読して注目したのはこの物語の基本構造だ。主人公(語り手)である「僕」は、三人の親族(叔父、祖父、父)から言葉(物語・本)の贈り物を受け取ることで生き延び、彷徨を終えて世界の果てにたどり着く。そこから「僕の人生」(おそらくは作家としての人生)を始めることができるようになる物語と言えよう。作家とは誰しも先人から言葉を受け継ぐことによって歩み出すように。
2023/11/03
Speyside
ニューヨーク三部作のような不可解さは鳴りを潜め、あくまで現実感のある物語。若くして肉親を亡くした天涯孤独な青年が、人生の意味を求めて彷徨い苦闘するという、テーマだけ見るとよくありそうな話なのだが、予想もしない方向にどんどん話が展開していき、読まされる。登場人物たちも、皆個性的で面白い。主人公ほど極端でないにしろ自分も若い頃に経験した、行き詰まりの感覚に共鳴した。「僕は、自分がなすべき何かとは何もしないことである、という結論に達した。僕のなすべき行為とは、いかなる行為も戦闘的に拒絶するという行為なのだ。」
2021/06/08
zoros
マーコの人生で関わった重要な人たちが、一人一人退場していく。愛する人が人生の一過点しか関われないなど想像できないまま今を生きていく。 マーコは失い、また出会うだろう。暗さが混じらなかった結末に彼の持つ長い未来―若い青年の可能性を感じた。 オースタ―3冊目。
2019/02/09
H
様々な人々が、いろいろな物を失っていく。限りなくゼロに近づいていく。その喪失の描写が素晴らしいと思う。連想から連想へと誘う月の描写。平凡な出来事にも、奇妙な偶然と神秘が隠れている。私たちがそれに気づかないだけなのだ。そんな風に思えてくる本。
2016/03/21
アルクシ・ガイ
時に冗長だったり雑だったりするけど、「でも人生ってそんなものじゃない?」と思わせることができる、ある意味とってもお得な本。
2014/02/20
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