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偶然の音楽

偶然の音楽

偶然の音楽

作家
ポール・オースター
Paul Auster
柴田元幸
出版社
新潮社
発売日
1998-12-01
ISBN
9784105217044
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偶然の音楽 / 感想・レビュー

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どんぐり

ナッシュは赤いサーブに乗ってアメリカの大陸上を移動する。移動し続けることが目的化し、それが自由の証のように。金があるうちはまだいい。金がなくなれば、いずれこの生活も終わる。金は自由を保障するが、金を使って自由のひとかけらを買うたびに、同様の自由を奪っていく。金が残り少なくなったときに出会ったのがジャックだった。さらなる自由を手にする金のために、ナッシュとジャックはポーカーゲームの賭けに出た。しかし、手にしたのは借金と壁作りという石積み生活だった。自由なんてどこにもありゃしない、有刺鉄線に囲まれた閉鎖環境で

2013/07/28

つーこ

突然大金を手にした男は、アメリカ中を旅する。そしてポーカーに負け全財産を失い、隔離された世界で石を積みながら生きる。一つも自分と被ることのないこのナッシュという主人公。バカな生き方にも思えるが、ある意味これが男のロマンなのかな。こんな破滅的な生き方は『不自由』なようで『自由』と言えなくもない。ラストを含め、全てを語らないからこそ余韻が押し寄せる。

2024/10/06

冬木楼 fuyukirou

オースターの作品は読み始めるとそのまますーっと本の世界に浸ってしまう感じが楽しい。題名に「音楽」とあるから音楽がキーなのかと思ったけどそうでもなく、物語は行き当たりばったりのように続く。主人公ジム・ナッシュに共感したり、そういう考え方するのかと思ったりしながらだんだん残りページが少なくなり、えっ、そういう終わり方! 何かの達成の物語でも無く、・・・まあ、人生ってそういうものかも。 とてもおもしろかった。 

2016/09/11

莉庭Reethi

★★★★★★車中ラジオから流れる弦楽四重奏曲のアンダンテ。クープランの「神秘的な障壁」という曲が出てくるが、自らはどこへも行き着かず、ただ空虚さを際立たせる。小説の中心となっているのが「石を積んで壁を作る」という古代や中世奴隷のような極限状況です。そのなかで相棒のポッツィは次第に精神に変調を来たし、ナッシュも平静を保とうとしつつ次第にバランスを見失っていく。見張り役となっているマークスも異様な存在感を醸し出し、それらが奇怪なコントラストをなしている。

2013/10/10

乙郎さん

アメリカの自由、そして絶望。男二人のロードムービーは展開を二転三転し、思いもよらない結末へ辿り着く。壁を造る仕事が人間に課せられた原罪を象徴しているような気がしてならない。ほかに楽しめた部分としては、ナッシュとポッツィの小気味よい会話。ナッシュは実にナイスガイだ。

2009/07/11

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