ニュー・ゴシック: ポーの末裔たち
ニュー・ゴシック: ポーの末裔たち / 感想・レビュー
かりさ
これはとても堪能しました。日常の背面に潜む怪異や闇をあえて覗こうとする…ニュー・ゴシックな11篇。幽霊奇譚からミステリ、SFなど様々なテイストの作品が並ぶ良質なアンソロジー。全体的に幽霊ものが多め。有り得なくはない恐怖に絡めとられます。中でもオーツ「他者たち」、ジーン・リース「懐かしき我が家」、オーキンクロウス「牢窓」、ウィリアム・ゴイエン「幽霊と人、水と土」、パトリシア・ハイスミス「ブラック・ハウス」がお気に入り。仄暗い世界からの帰り道を探し続けています 。
2018/12/15
ぐうぐう
ホラーとゴシックに明確な違いがあるように、モダン・ホラーとニュー・ゴシックにも、むろん違いはある。日常を舞台としながらも、格式、もしくは様式美といったものを大切にする後者は、だからこそ、実態を伴わない怪異が、覗き見する行為にも似て、日常の隣りに存在し、前者よりもリアルな光景として映し出される。翻訳者のあとがきにもあるように、その感触はミニマリズムのほうに近いのかもしれない。とはいえ、このアンソロジー集に収録された短編は、実にバラエティに富んでいる。(つづく)
2013/03/15
ミツ
ふとした日常の裂け目からのぞく恐怖と怪奇、ゴシック小説の伝統とミニマリズムの潮流を受けた11の短編集。収録作は仄暗い怖さを感じさせる幽霊譚からSF、ミステリ仕立てのものまでなかなか種類豊富である。そのせいかどうにもいわゆる“ホラー”というよりかは、なんとも後味の悪い、嫌ぁ~な気分になる小話集といった感じになっている。そんな中でもお気に入りはジョイス・キャロル・オーツ『他者たち』、ロバート・クーヴァー『暗殺者の夜』、ヴィリアム・ゴイエン『幽霊と人、水と土』、パトリシア・ハイスミス『ブラック・ハウス』
2013/07/24
くさてる
「モダンホラーが実体化して蓋をしようとするその闇を、あえて覗こうとする」という、ニュー・ゴシックのアンソロジイ。ジョイス・キャロル・オーツとパトリシア・ハイスミスが目当てで読んだけれど、期待通りの落ちつかない不安が残る読後感でした。その他の作品も、それぞれに雰囲気があって、少し地味だけど癖はある感じの面白いアンソロジイでした。
2014/03/22
三柴ゆよし
ゴシック小説といえば、呪われた城館、彷徨う亡霊、座敷牢と狂人、血の気ない美女……などのモチーフを修飾過多な文章で綴った小説、という非常に偏った印象を持ってるのだが、本書では「偉大なアメリカ小説」に背を向け、ごく小さい日常の断面を描くことを旨としたミニマリズム文学のなかにあって、そうした日常の背後に隠れ潜むある種の不吉な亀裂を垣間見てしまう小説を「ニュー・ゴシック」と呼んでいる。アンソロジーとしての質は高い。幽霊や怪物があたりまえに出てくる話もあれば、そうでない話もある。一様に暗く、頽廃的ではあるが。(続)
2011/09/21
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