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これから話す物語 (新潮・現代世界の文学)

これから話す物語 (新潮・現代世界の文学)

これから話す物語 (新潮・現代世界の文学)

作家
セース・ノーテボーム
Cees Nooteboom
鴻巣友季子
出版社
新潮社
発売日
1996-10-01
ISBN
9784105339012
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これから話す物語 (新潮・現代世界の文学) / 感想・レビュー

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nobi

4000冊の本に埋もれて分厚い眼鏡をかけソクラテスと渾名された高校教師の愚痴じみたモノローグが、現実なのか死にかけなのか、アムステルダムなのか今の?昔の?リスボンなのかアマゾンなのか、不分明なもどかしさの中を進む内に、生徒の眼前にギリシャ悲劇を蘇らせ、同僚の人妻とは博識と洒落っ気を朴訥さで包んだ会話を交わし、船旅の同行者の各々の体験は歴史を体現し、毒杯を煽るソクラテスを授業で演じて同僚の不倫相手の生徒を惹きつける。鼠の屍体に集まるシデムシ、制御の効かない情愛、星座とラテン語の透徹した世界が隣り合っている。

2020/06/06

原玉幸子

何これ。自分が何たるやかが分からなくなる不条理小説なのかと思うところから始まり、激烈な恋愛とも言えない回想は、敢えて言うなら自暴自棄や虚無感といった言葉が思いついたのですが、どうも違うなぁと。「訳者あとがき」での種明かしで漸く著者の企図を知り、自分の読解力と想像力の無さに反省もしましたが、「人は詩的であるのか」、「恋愛ってこれほど淡泊なのか」との疑問と共に、結局作品の印象薄。私の死の直前2秒前の意識は(対象の相手を映像でなくてもいいので)自身に潜む恋愛感情でありたいと願っていますが……(◎2023年・冬)

2023/12/05

刳森伸一

初ノーテボーム。時間軸がフラフラと揺れる一人称独白の語りは捉えがたく、中々全貌が見えないため、はじめの方は戸惑ってしまうが、徐々に語り手の秘めたる思いが分かるにつれ、そのユーモアの中にある哀愁がしみじみと心に染み入ってくる。

2020/11/07

茶幸才斎

ある朝目覚めると、そこは20年前にとある人妻と一夜を過ごしたリスボンのホテルの一室だった。ヘルマン・ミュセルトは思う。今の自分は、変わらずヘルマン・ミュセルトなのか、それとも別の誰かなのか。今の自分は、変わらず今の自分なのか、それとも20年前の自分なのか。彼は現在を観察し、過去を回想し、〝あなた〟に向け果てしなく語りかける。彼と違って私の場合、人生を総括するときに語るべき言葉は多くない気がする。例えば、「決して華はなかったが、悪くはなかった。家族には感謝している。」図らずも、今年を締めくくる言葉になった。

2019/12/24

figaro

熟成した言葉で「私を悪夢すなわち夜の亡霊から守りたまえ」(Procul recedant somnia, et noctium phantasmata.)と唱え続けているような作品です。「朝の光はもうたくさん」というマリアの言葉を聞きながら、クリトーンであるはずのリーザをはるか昔に喪失しているミュセルトが、最後の夢物語を語るべき相手はどこにいるのでしょう。「愛は愛するもののなかにある。」(プラトン)なら、アーレントと関係するリーザを聞き手とすべきではないが、これもミュセルトの中にしかない問題なのでしょう。

2014/04/28

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