停電の夜に (Shinchosha CREST BOOKS)
停電の夜に (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー
遥かなる想い
インド系作家の味わい深い短編集である。 静かな語らいが 胸に染みる。 夫婦・家族の 秘密、二つの大陸への想いなどが 繊細な筆致で描かれる。 日常のさりげない出来事を 丁寧に描いている、 そんな短編集だった。
2019/07/06
アン
ラヒリの初期の作品を読み返したくなり。ロウソクを灯し夫婦間で打ち明け話をする『停電の夜に』、少女が異国の地にいる家族を想うことを知る『ピルザダさんが食事に来たころ』、新天地で職を得て結婚生活に馴染んでいく『三度目で最後の大陸』…。インドとアメリカの狭間において揺れる家族、夫婦の関係を中心とし、心の機微を多彩な視点から繊細に表現され魅力的です。日常の暮らしに迷い込む秘密やすれ違い、孤独感や寄る辺なさ。物悲しさの中に温もりが宿り、味わい深い余韻を残します。少し苦いのに、人生が愛おしくなる不思議さに惹かれて。
2020/05/01
雪うさぎ
私は彫刻を見るときは必ず背中から見る。その人物の背負っているものが見えるような気がするからだ。ラヒリの被写体を見る角度は、平安絵巻に出てくる"吹抜屋台"という表現法に似ている。人と人との距離間を描くには最適と言われる構図だ。その視点から彼女は物理的ではなく"シンパシーを物差しとした遠近法"で描いている。心の近さだ。共感するものがあれば、心の距離はぐっと縮まり、地球の裏側の出来事も身近な出来事となるのだ。シンパシーを感じることが、国境や言葉の壁を越えて、人と人とが分かり合える第一歩になるような気がする。
2016/04/21
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
☆5.0 くせがすごい!とにかく妙!何と言えば良いのだろう?ぶっきら棒?投げやり?不思議ちゃん!“どこから”の目線で語ってるんだ?俯瞰目線?いつの間にか、じわじわじわじわ、今まで感じたことのない“何か”に取り憑かれる短編集。
2021/01/07
naoっぴ
短編ひとつ読み終わるたびにひとつため息。人の心はどこに動くかわからない。そうだよねぇと感慨にふけってみたり、現実ってこうなのよと膝を打ってみたり。ありふれた日常の場面での何気ないしぐさや言葉のやりとりだけで、人の心をリアルに感じさせてくれる文章がすごい。「停電の夜に」の夫婦の感情の皮肉な違いや「ピルザダさんがー」の祈りの美しさ、「セクシー」の揺れ動く女心、「三度目で最後のー」の夫婦が馴染む感じなどとても良かった。そして「神の恵みの家」は個人的に大好き。妻のトゥインクルが奔放で輝いていて笑顔になれた。
2016/09/07
感想・レビューをもっと見る