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ある秘密 (Shinchosha CREST BOOKS)

ある秘密 (Shinchosha CREST BOOKS)

ある秘密 (Shinchosha CREST BOOKS)

作家
フィリップ グランベール
Philippe Grimbert
野崎歓
出版社
新潮社
発売日
2005-11-01
ISBN
9784105900519
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ある秘密 (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

ナチスのホロコーストがもたらした悲劇の物語なのだが、グランベールはそれを声高には語らない。静かに内省的に語って行く。逮捕による一家の崩壊もまた、きわめて私的に語られるだけだ。にもかかわらず、哀しみと喪失の感覚は深く読者の心にも沈潜してゆく。作家の自伝的な小説のようだが、自らの家族の過去に起こった秘密を受け止めていく過程は、そのまま精神における統合への道程でもあるのだろう。あの頃のパリとフランスの情景が、暗鬱な霧の中に立ちあがってくる。シモンの墓は、父の、そして母の背負った長い期間の苦悩からの解放だった。

2015/04/09

遥かなる想い

1950年代のパリを舞台にしたある家族の秘密の物語である。 両親はいったい何を隠しているのだろうか? ひたすら 想像上の兄と暮らす僕の夢想の先には 何が現れるのか? ナチ占領下のパリで 起こった酷い真実が 明らかになる。それにしても、 物語全体の底に流れる 闇の雰囲気が 緊迫感を与える…戦争の影響下 奇異な人生を歩んだ 父と母 そして 僕の物語だった。

2019/09/07

アン

著者の自伝的小説であり、両親の秘密に纏わる物語です。フランスがナチスの占領下にあった時代、グランベール家で起きた出来事とホロコーストによる悲劇。フィリップが囚われ続けた闇から、傷つきながらも真実を見つめ、自分を取り戻していく強さは、未来に進むために必要な力であったのだと思います。隠されていた事は非常に重く、戦争と哀しみの愛の傷痕として消し去ることはできないでしょう。しかし、両親と兄へ捧げたこの物語は、時代の波に翻弄されながらも懸命に生きた人々の存在を私達の心に刻むものでもあるのです。

2019/11/14

どんぐり

屋根裏で見つけたぬいぐるみから兄がいたことを知る少年の語りから、このユダヤ人一家の悲劇の物語が始まる。結婚前に義理の兄妹の関係にあった両親の行動がなければ、生きていたかもしれない父の息子シモンと元妻のアンナ、そしてアンナの自殺的な行動がなければ、いまの自分はなかったもしれない語り手。他者の永遠の不在と恥辱の上に成り立っている家族の秘密が明かされる。この作品も、同じホロコーストを描いた『サラの鍵』と同様に映画化されている。

2019/07/13

NAO

両親がひた隠しにしていたある秘密。この話は、常に少年の目線で語られており、少年に秘密を打ち明けたのは一家と最も近いところにいたルイーズであって両親ではない。両親の隠された秘密の過去の物語であると同時に、両親が隠し持つ過去の秘密にとらわれて成長できなかった少年が自立する話でもあるため、この秘密は、客観的な事実として語られる必要があったのだろう。そして、主人公は、自分が客観的に過去を見つめることで呪縛から解放されたように、父親にも客観的な事実を知らせることで彼の過去の呪縛を取り除こうとしたのだ。

2019/02/16

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