千年の祈り (新潮クレスト・ブックス)
千年の祈り (新潮クレスト・ブックス) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
今はアメリカ在住の中国人作家イーユン・リーが英語で書いた第1短篇集。すでに数々の文学賞を受賞し、「もっとも有望な若手アメリカ作家」の1人にも選出されている。表題作「千年の祈り」の中に「英語で話すと話しやすいの。わたし、中国語だとうまく話せないのよ」というくだりがあるが、それはそのまま、リー自身にあてはまるのだろう。両親の世代の文化大革命、そして自分たち自身で経験した天安門事件と、必ずしも中国にいたから語れないという事情ばかりではなく、英語で語ることで自らそのものを客体化、相対化することができるのだろう。
2014/09/13
KAZOO
アメリカ在住の中国女性が書いた自分の故郷などを題材にしている短編集です。10の作品が入っていて、私は「不滅」と表題作がかなりよかった気がします。ほかの作品も水準以上であると感じます。読んでいて作品の場所は違うのですがインドからのジュンパ・ラヒリの作品を思い出していました。
2016/10/16
遥かなる想い
北京生まれの作家による叙情的な短編集である。人生の黄昏を描いた作品が 多いが、心に染みるような余韻が心地良い。 現代中国に題材をおいたどの作品にも 人生への潔さと 諦念が 底に流れている印象 …中国の歴史の断片を散りばめながら、 何かを諦め、喪いながら 今を生きた 中国の 人々の 強さを 感じる…そんな印象の読後感だった。
2019/09/24
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
読んでいる間ずっと抑圧された世界に息がしづらかった。親と子の絆としがらみ、狭い村の人間関係、支配者と被支配者の絶対的な差、田舎と都会の空気の違い。日本でも感じるそれをぎゅっと濃縮させたような10編の短編集。重苦しく、きっと事実として近しいものがあったのだろう(今もあるのか)と思わせる隣の国の気配。儒教的考えが根深く底にある感じも伝わってきた。興味深い作品。
2020/02/27
buchipanda3
北京出身の中国系アメリカ人作家による短篇集。彼女は母語ではなく英語で書いているとのこと。洗練された文章の中に人間味のある叙情性が感じられ印象深い余韻が残った。さらに人生観について思いを巡らせずにはいられない内容で読み応えも十分。ある篇の主人公、三三が言う、人生は理解不能な謎だと。善い生き方をしても世の不条理にさらされ、家族を理解しようとしても意思のずれが生じる。でも人生の全てを理解することに囚われなくてもよいのだ。謎なのだから。それを著者は物語を異国の言葉で紡ぎ、主観と客観を交えたことで気付けたのでは。
2022/05/16
感想・レビューをもっと見る