見知らぬ場所 (Shinchosha CREST BOOKS)
見知らぬ場所 (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含む8つの短篇からなる作品集。最後の3篇は連作が試みられている。いずれもコルコタからアメリカにやって来たベンガリーの移民一家を描く。そこには文化の差異も当然あるが、それと共に世代の差も、それとは目には見えない形でありながらも大きく立ちはだかる。子ども時代にアメリカに渡った彼らは、すでにアメリカ人なのだが、それでもやはりインド人であることから免れることはできない。その意味では彼らはどこまでも異邦人であり、また同時に内なる異邦人でもあった。いずれの小説も心に沁みるが、とりわけ巻末の「陸地へ」は絶品。
2020/04/27
遥かなる想い
ラヒリが紡ぐ短編集である。 娘の視点で 父・母の世代を描く。 インドとアメリカの 異文化感は 健在だが、 描く対象が 第2世代に移って、やや穏やかに なった印象である。 母を亡くした後の 父と娘の手探りのような関係が 印象的…安定の清冽な短編集だった。
2019/11/29
藤月はな(灯れ松明の火)
久しぶりのラヒリ。トレヴァー、マンロー同様に歳を経てから読んだ方が感慨が深いのかもしれません。どの短編も「静かに訪れる家族/愛の断絶」を描いているからだ。「「地獄/天国」の女同士だからこその結束と優越感と同時に移民世代の目によるアメリカ人への不信感も描いているので不公平感が逆転しているのが不思議だ。「今夜の泊まり」の熟年夫婦の不和と仲直りに苦笑い。「よいところだけ」は自分のせいで弟が落伍者になったと心配する姉の話ですが、この姉、自分のことしか考えてないよね・・・。こんな姉に一々、心配されるのも確かにウザイ
2017/11/17
どんぐり
アメリカ移民二世のベンガル人の家族を描いた9篇。酒に溺れていく弟と姉の関係を描いた「よいところだけ」、亡き母親の想い出を封印して父親の再婚家庭で過ごすことになる大学生の複雑な心境を描いた「年の暮れ」がいい。一篇読むごとに頭の切り替えを必要とする短編集なので、集中力が途切れると物語に入り込めずに弾き飛ばされる場合もある。
2019/12/30
キムチ
ラヒリを愛し読むのだがどんどんその世界が研ぎ澄まされて行く感じがする。一気読みできない・・温かな陽光だったりツンドラに吹く氷の風だったり。。ビターテイストのラヒリマジックが8つの中編モノで展開。「へーマとカウシク」の連作はさながらシネマの世界。ラヒリ作に多い高学歴、非日常の世界で繰り広げられる世代・性差等間の軋轢 そして繕うせめぎ合い、ラストの終え方は衝撃だ。偶然と必然の糸を織りなして行く~人生は丸くなるための旅路と思わせられる。。移民文学第二世代が中心の世界が素晴らしい訳で豊饒な口調で語られていた
2021/04/12
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