黙祷の時間 (Shinchosha CREST BOOKS)
黙祷の時間 (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー
遥かなる想い
ドイツの 巨匠による 少年クリスティンの 年上の女性への 憧れを描いた作品である。 82才のレンツが 男子高校生の恋をみずみずしく 描いた作品というので、出版直後から 評判を呼んだらしい。 やや感傷に浸る過ぎるきらいがあるが、 遺影を見つめる クリスティンの風景と 海辺の語らいだけが 初々しく心に残る、そんな作品だった。
2020/09/16
紅はこべ
少年が大人の女性に心を奪われるって、今期のドラマにもある、鉄板の設定だけど、本作はあくまで少年の視点のみで描かれていて、相手の女性教師の心情が汲み取れない。彼女も少年を本当に愛していたのか。絶頂で摘み取られた恋(by『あさきゆめみし』)が少年の人生にどんな影響を及ぼすのか、不明のまま終了。『動物農場』を『アニマルファーム』と表記したのはわざとかな。
2018/10/27
KAZOO
レンツの作品は同じシリーズで出ている「遺失物管理所」しか読んだことがないのですが、このような青春小説も書いていたのですね。私も何十年前を思い出しました。若いころはこのような小説にあこがれていました。狭き門やシュトルムの小説などです。この小説は現代に合わせるような感じでかかれていますがそんなに直接的な感じはしません。この中で英語の教材でジョージ・オーウェルの「アニマル・ファーム」が出てきたのでドイツでもそうだったのだと同感しました。私も高校時代に副読本で読みました。
2015/04/08
星落秋風五丈原
もしこの作品が、成長したクリスティアンの視点で描かれたら謎が少しは明らかになっていたのではないか。勿論、当人が亡くなっているので推測の域は出ないが、シュテラはここに来る前、誰かと恋愛関係にあって、その相手から電話がかかってきたのでは。クリスティアンとの恋愛に一歩踏み込めなかったのも、彼との年齢差以外に、別の存在があったからではないか、等々。おそらくこれを読む大人の読者ならば、あれこれと想像をめぐらせることができる要素はつまっている。何もかもを明らかにしてしまうと、この作品の恋愛小説自体の良さも消える。
2010/09/12
あじ
美しい女教師への恋慕を募らせる、少年の追憶。掠めていく愛の残像を、波打ち際で拾い集めていくような物語。彼女は海に攫われ、永遠にその時を止める。少年の喪失感は軋みを伴い、音もたてず胸を泣かせる。今はまだ誰にも打ち明けられない、ある愛の詩。
2016/11/09
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