ロスト・シティ・レディオ (Shinchosha CREST BOOKS)
ロスト・シティ・レディオ (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー
遥かなる想い
行方不明者を探すラジオ番組にまつわる物語である。内戦状態にある架空の国での出来事は少し怖く、妙な緊迫感が漂う。姿を消した夫レイはどこにいるのか?そしてレイの過去に何があったのか?暴力に支配された国での 恐怖が 冷静に描かれている…そんな作品だった。
2020/11/04
キムチ
張り詰めた緊張の中で時間が錯綜。個人として人間の弱さと強さ~目まぐるしく展開する時空の中でかなり困惑しつつ読んだ為、時間とエネルギーを要した。筆者30歳代半ばで執筆したとは思えぬほど老練した筆致。読みつつ、「オスカーワオ‥」の臭いを思い出した。あちらの方が読み易かったが。舞台は南米、内戦終了後10年余り経つが、人々の心に有る傷は未だ、かさぶたは出来ていない。ノーマは失踪者を探すラジオ番組の人気DJ 。無機質な名前「1797村」からやって来た少年ビクトル。その出会いで過去に沈んでいた「夫レイ」共にいた時間
2020/08/25
マリカ
戦争は、人間社会を分断し、人間の人生を思わぬ瞬間で途切れさせ、残されたものの心の傷は癒えることはない。ノーマの夫の生死も、ビクトルの父親がジャングルでどのように殺されたのかも、少年兵士たちが川岸で射殺した囚人がどんな人間であったかも、誰一人としてすべてを知るものはいない。戦争における人間の無名性が悲しい。今も世界のどこかが戦場となり、無名の死者が増え続ける。ロスト・シティ・レディオに寄せられる行方不明者リストは尽きることはなく、ノーマのレイを探す心の旅は終わらない。
2012/09/28
夏
内戦状態にある架空の国でラジオパーソナリティーを勤めるノーマのもとに、ある日一人の少年が訪ねてくる。彼は一枚の行方不明者のリストを持ち、彼女の番組「ロスト・シティ・レディオ」で彼らを探してもらうためにジャングルの村からやって来た。リストの中に10年前に姿を消した彼女の夫の名前があることから、彼女の過去と少年の村での日々が交錯し、彼女の知らない夫の過去が明らかにされていく。緊張感と喪失感が漂い、読んでいる間ずっと胸が締め付けられるようだった。架空の国ではあるが、舞台は南米だと思われる。★★★★★
2020/11/12
Ecriture
内戦から10年ほど経った中南米のある国。ジャングルの少年ビクトルは教師のマナウと共に行方不明者のリストを手に都会へとやってくる。人気ラジオ番組「ロスト・シティ・レディオ」でリストを読み上げてもらうために。失われた者の名が他人の口から発せられることになぜこれほど惹きつけられるのか。それは、自らの口で愛する者の名を呼び、悼むことが許されない状況(内戦・政府軍の抑圧)があるからだ。ノーマも最愛の夫の名は口にすることができない。誰かの代わりに声を出してあげること、これがアラルコンの小説の一つの働きかもしれない。
2014/07/18
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