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低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

作家
ジュンパ・ラヒリ
Jhumpa Lahiri
小川高義
出版社
新潮社
発売日
2014-08-26
ISBN
9784105901103
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低地 (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー

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ちゃちゃ

カルカッタ近郊の実家から見える「低地」。泥に身を隠しやがて射殺された弟のウダヤン。故郷を離れて渡米し亡き弟の妻ガウリと結婚した兄のスバシュ。第二次大戦後のインドとアメリカを舞台に、激動する政治や社会情勢、抗いがたい運命に翻弄される「家族」を描いたラヒリの長編。繊細で抑制された美しい筆致は、内なる情動の激しさを逆に際立たせる。自らに正直に生きるが故に他者を傷つけ、その代償として大きな喪失と孤独に耐えながら、それでも愛を求め、泥に埋まったように生き延びる彼らの姿が哀しくも愛おしい。読後に深い余韻を残す秀作だ。

2020/07/28

どんぐり

インドで活動家の弟が警官によって殺された。その身重の妻ガウリを引き受ける兄スバッシュ。事件の翌年、追われるようにアメリカに渡った2人。自らの意志で選んだ結婚だったが、無理な組み合わせであることが日一日と見えてきていた。そんなある日、ガウリはスバシュと娘ベラを捨てて出て行った。ベラにとって父や母と過ごした時間はあっても、親子3人がそろっていた時間はないに等しかった。妊娠した女、父親のいない子、今度はベラだ。インドとアメリカを舞台にした3世代に渡る家族の物語。多様な文化をもったアメリカが生んだ作品。

2015/02/27

めしいらず

故郷が、親が、その愛が疎ましく、振り切るように、逃れるように、そこから離れる。その先で偶然出会い、ひと時交じり合う、人生に傷を抱えた人々。また、離れて行った家族を遠く離れた地から思い、帰郷を待ち続ける親や兄弟。それぞれに積み重なる年月は、暴力的に人生を塗り替える。巡り巡って、故郷を、親を思う時、愛に報いたいと思う時は、いつだって喪われた後だ。いつしか家族として集い、離れ、形を変えてまた集う。その家族史、それぞれの人生を追いながら、私は己が人生の断片を重ねずにはいられない。そして時間が止まる美しいラスト。

2014/11/02

SOHSA

《図書館本》『停電の夜に』以来のラヒリだった。長編の持つ重厚感とそれぞれの登場人物の繊細な心理描写は見事としか言いようがない。しかし読後のこの言い様のない感じはいったい何だろう。人生の無情とか不条理とかというものではなく、ただずっしりとのしかかるこの感じは。ただただラヒリの筆力の強さに打ちのめされたような感じなのだ。何が幸せで何が不幸せなのかはわからない。しかし人生とはまさに在るようにして在るということか。また時間は人の心のなかでは長短を必ずしも持たないということか。悠久の流れの中で人はやはり漂うのみか。

2015/05/05

Willie the Wildcat

家族1人1人の抱えた心の痛み。根底の帰属性への疑念。母国、故郷、そして家族。時勢に揺れる帰属意識。それでも断ち切れない心の繋がり。葛藤を抱えた苦悩と、真実に直面した苦悩。ガウリの帰郷とベラのガウリへの手紙に、踏み込んだ一歩の意味と意義を感じる。加えて、物心両面での”距離感”も印象的。是非はともかく、時にこの距離が心の癒しにもなるが、時に誤解の対象ともなる。故の帰属でもある。言葉にできない痛み。時間が唯一の処方箋という感であり、帰属故の癒しにもなると信じたい。

2017/09/19

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