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西への出口 (Shinchosha CREST BOOKS)

西への出口 (Shinchosha CREST BOOKS)

西への出口 (Shinchosha CREST BOOKS)

作家
モーシン・ハミッド
藤井光
出版社
新潮社
発売日
2019-12-24
ISBN
9784105901622
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西への出口 (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー

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アン

内戦が拡大する街で、惹かれあっていくサイードとナディア。2人は破壊と殺戮から逃れるため、別の国へ通じるという「扉」を開けて、西へと国境を越えて移動します。監視ネットワーク、家族と故郷への想い、排外主義者、信仰…。扉は世界中にあり、様々な国に辿り着いた人々の姿も文中に挟まれ印象的です。深刻な移民問題にあふれる現代社会。抑制の効いた文体で描かれることで、岐路に立ち移動を巡って変化していく男女の心情が一層際立ち、心にしみてきます。「私たちはみな、時のなかを移住していく。」

2020/02/13

南雲吾朗

コントロール不能な「どこでもドア」が世界中に無作為に置かれた状態の物語り。突然、難民が現れて、居住区を占拠しだしたら?私たちは、廃絶しようとするだろうか?それとも、難民も含めてうまく社会が回るように、彼らに職場を用意し、居住領域を設けるのだろうか?あらゆる人々、あらゆる宗教、習慣が混じり合う。いずれにせよ日常は崩壊し、混沌とした世界になるのだろう。文明と平和は、距離を隔てることで保たれているという事を実感するであろう。この小説は二人の若者に焦点をあてて書いてあるが、もっと深く考えさせられた。

2020/10/12

ちえ

ナディアとサイードは中東を思わせる街で知りあい恋人同士になるが内戦で街は荒廃、自由が制限され命の危険も感じるようになり…「扉」、SNS、、監視カメラ、ドローン…寓話?SF?設定に戸惑いながらも、読みながら二人と共に「扉」を抜け新しい土地へ。「扉」を通って世界のあちこちを移動しながら、常に両足が地面から浮いているような違和感。それは私にとって移民や難民というどこか遠く感じていた人達の事を想像させられるものだった。旅を続ける間に二人の関係性も変化していく。最後の章の美しさと切なさ。↓

2020/01/13

ヘラジカ

邦訳を待ち望んでいた作品。短いながら濃厚で煌めくような傑作。受賞歴や批評に違わぬ素晴らしい小説だった。終始貫徹するあまりに抑えられた文章が印象的。現代社会を誇張して生み出された「扉」の寓話的存在と、徹底してロマンチシズムを排した痛いほどリアリスティックな生活が絶妙に混ざり合って斬新な読書感だった。日本のサブジャンルで言うと"セカイ系"ということになるのだろうか。この強烈なディストピア世界で描かれるのが、単純な上手くいかない人間関係であることには感心させられた。ラストのなんとも言えない切なさも胸に沁みた。

2019/12/22

白玉あずき

「コウモリの見た夢」よりはずっと複雑で解釈が難しくはなっている。あの名翻訳家藤井光氏が訳出し、解説まで書いておられて世評も高い感じなのだが。危険な母国を脱出した移民達の新天地での文化摩擦、故国の人間関係の喪失、経済的苦労、受け入れ側の困難、散々いろんな作品が世に出ているので、特にこの作品で心動かされることも無く・・・・私に読解力が無いのか、すれっからしになったのか。ちょっと残念な読後感。西への扉があちこちに出現するという設定で移民の脱出の苦労と危険を描かないなら、その分他の何かに焦点を当てて欲しかった。

2020/03/09

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