漱石とその時代 1 (新潮選書)
漱石とその時代 1 (新潮選書) / 感想・レビュー
うえ
ああそうか、これはもう一つの坂の上の雲なんだな。。漱石と子規は真っ直ぐに坂を登っていく。しかしその先には暗雲が立ち込めているのだ。母国では冷淡に扱われている進化論に関する講演で、大成功したモースは、母国から俊才フェノロサを日本に呼び寄せる。「儒学から洋学へ-朱子学からハーバート・スペンサーへ転換しつつある時代に、漢学塾にはいろうというの明らかに未来の拒否である」「金之助はいうまでもなく、二律背反解決の道を禅に求めた」だがネオダーウィニズムという時代は容赦なく漱石にまとわりついて来る。近代という時代である。
2021/07/06
ぶらり
明治の社会世相を知るのにとても役立つ。新政府の裏側やそれに対する人々の反応が”意外”にも精緻に描かれていて、歴史小説としての魅力満載。幼少時代の漱石像についても違和感満載。「道草」の少年期をそのまま漱石の少年時代としているが、事件はなぞれるとしても性格は漱石の創作。江藤氏が描くような少年は皮肉屋には成長しないと思う。この辺りの人間観察力が漱石の作品感を読者毎に大きく変えている要因か。作品から抽出した人間像を作者に装着させて作者像を再構築する手法は、登場人物像を綿密に設計する漱石には通用しないのでは。
2010/10/01
ダイキ
誕生から明治三十三年夏の五高教授時代まで。
2014/12/04
Gen Kato
主役は漱石と同時に「明治」。個人は時代や社会とは切り離せないことを強く感じさせられます。嫂との関係に関しては江藤淳の洞察というより「文学的直観」という感がありますが…
2015/04/01
讃壽鐵朗
江藤淳は文芸評論家ではあるが、一方明治時代の政治、人物等に関する著作も多い。この二つの要素が上手くかみ合って、正に題名「漱石とその時代」が物語るように、漱石の生き様及び作品の評論とその時代の動きが並列的に述べられている。つまり、読者は漱石の人物、作品を理解すると共に、明治という時代の流れをもくみ取ることが出来るわけである。
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