私の好きな長編小説 (新潮選書)
私の好きな長編小説 (新潮選書) / 感想・レビュー
カブトムシ
加賀乙彦氏のお父さんは、サラリーマンで、仕事の傍ら「円本」を購入して読んでいた。円本は、昭和初年に改造社が発行したもので、全巻総ルビが付いていて、子供にも読みやすかった。その時には、島崎藤村の印象は、薄かった。円本は短編小説が中心だったのだ。島崎藤村が本当に解ってきたのは、「破戒」「家」「夜明け前」などの長編小説に出会ってからだという。外国に日本の長編小説で一つ紹介するとしたら、「夜明け前」ではないかと加賀氏はいう。氏は五年の歳月を費やして、1976年に「日本の長編小説」(筑摩書房)を書き上げたのである。
giant_nobita
各回1時間の講演が基になっているので、長編小説1作品につき20ページ弱の分量しか当てられていないが、舞台となる場所の対比関係や登場人物の配置、伏線、語りの重層性などの、作品の構造に着目した読みがおもしろくてためになる。例えばトルストイ『アンナ・カレーニナ』の回では汽車や馬車を取り上げ、冒頭と結末などの重要な場面に汽車が関わっていることや、汽車の偶然性と馬車の意思性の対照関係、ドリイの乗る「野暮ったい」馬車が、「華美な」馬車に乗る「アンナの表面的な華美な生活を批判する小道具になって」いることを論じていく。
2019/01/12
讃壽鐵朗
小説の内容が詳しく説明されているので、読んだような気持ちになった
2018/01/22
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