敵
敵 / 感想・レビュー
ぽち
たぶん三度目の再読になるのだけど、これまでこの作品のどこが好きだったのかと言えば前半のグルメ小説的な部分で、川上弘美さんの諸作にも言えることなのだけど食べ物がおいしそうな小説というのは読んでいてほんとうにとても楽しい。今回の読書もそのへんはもちろん楽しめたのだけど、タイトルにもなっている「敵」が蠢きだす件、当時はインターネット以前のパソコン通信の時代だった訳だけど、いま読むとこれはまさしく「作家は炭鉱のカナリアである」を地で行っている、なんだかその現場に居合わせた当事者の気持ちにもなってくる。
2018/02/03
アキ
残り少なく限りのある生を前にして、老醜を晒すまいと決意した元大学教授渡辺儀助75歳。その日々を綴る300ページ近くは、最後の数ページ、そのためのもの。まるで、生きるすべては死と向き合うその時のためのものに過ぎない、とでも言うように。四十九日もまだの母の本棚からの一冊。筒井康隆作品を貪り読んだのは大学生の頃の私で、母の蔵書にはこれまでなかったはず。また、読むべくして読んだ(?)そんな不思議な思いと『純文学』作品だったのを忘れて読んでいたり、寂寥感に沈む結末が、今の自分には忘れることのない印象を残す。
2020/11/12
がんぞ
著者よりやや上の世代の戯曲研究を専門とした元大学教授の「死の受容」をテーマとした小説。ドタバタは夢想の中でだけ。低金利が高齢者の生活を直撃していることは知っているが、いじましい(若年の生活はもっと苦しい)。主人公には子も無い。妻に先立たれて「早くこっちにおいでなさい」と夢の中で言われたりする。もっと子供な部分があっていいように思うのだが、75歳という設定では枯木か/余談ながらまだギリ50代なのに最近自転車で赤信号を見落としでヒヤッが2回あった。歳を取るとはそんなふうに現実感が無くなっていくことかも知れない
2013/06/13
ホレイシア
ひょっとしたら20年ぶりぐらいの筒井作品。これがよかった。著者も私も変わったのだろう。
2008/07/03
Ai
儀助さんの日常生活が細やかな描写で描かれる。しかし、一人暮らしのお爺さんのほっこりした日常がだんだん妄想に飲み込まれていき、前半の描写が細やかであればあるほど効く。『パプリカ』のような読後感だった。
2018/01/12
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