つげ義春: 夢と旅の世界 (とんぼの本)
つげ義春: 夢と旅の世界 (とんぼの本) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
私がつげ義春の名前を知ったのは十代の頃、みなもと太郎の漫画『風雲児たち』で、柘植という名字の武士が林子平を必殺するめ固めするシーンだった。その注釈には「根暗漫画の元祖」と書いてあった様な気がする。以来気になっていた。水木しげる『昭和史』にも水木家のアシスタントに来ていた登場人物だった。水木が一目置いているのがわかった。その頃既に伝説的な人だったのだ。二十代の頃、竹中直人監督『無能の人』の映画化でつげ漫画があちこちから出た。ブームにまかせ次々に読んでいった。代表作はやはり衝撃的だった(続く)。
2015/04/18
ホークス
2014年刊。『ねじ式』で知られる漫画家、つげ義春氏のビジュアルガイド。美術史家の山下裕二氏にとっては、日本美術史上で最も好きな作家。「観光地でない田舎の町を何時間でも歩いていられる」感覚が、つげ作品には通底すると言う。いやあ分かる。つげ氏が語る「リアリズムとは?」にも得心した。世の中や主観が作り出す「意味」に縛られず、現実世界をそのまま直視するのがリアリズム。自意識からの解放、宗教的な悟りにもつながる。自由になりたいと感じる時、本当はこの境地を欲しているのだと思う。『ねじ式』などの原画掲載も嬉しい。
2021/08/28
あたびー
「ねじ式」「外のふくらみ」「紅い花」「ゲンセンカン主人」が、原稿のまま掲載されている。セリフは貼り付けてあって、テープのあとまである。どうホワイトを入れてあるかも分かる。大学教授の山下氏との対談は突き抜けている。いかにも私たちが想像するつげのパーソナリティそのもので笑ってしまう。大のつげファンだという東村アキコ氏のつげ作品ごっこは楽しそうだ!つげが70年代に旅先で撮った写真は既に貴重な昭和の記録になっている。そんな田舎へ出かけて写真を撮る人などいないだろうから。
2022/09/15
紫羊
つげ義春の作品を読むとき、普段ねむっている細胞が揺り起こされるような気がする。妙に神経に障る。悪い夢を見そう。でも止められない不思議な魅力がある。25年以上休筆している著者への4時間にわたるインタビューでは、いかにも、というのか、意外にもというのか、最後にさらっと触れられていた著者の近況が心に沁みた。
2016/03/07
リッツ
子供の時から長く愛読している。有名人のファンたちが熱くその愛を語っていたが、私にもわかる感じ。風景に状況にふとつぶやいていた、こころのなかで、あの台詞を。その気持ちになっていた。浸透してしまっていたそれは限りなくリアルでいて陶酔を呼ぶ。うんうん、知ってる、知ってる、何度も読んだ、の果てに、え?うそ!知らない、読んでないが出てきたのでウロウロしてしまった。「夢日記」不覚にも未読「外のふくらみ」こわいリアルな夢の世界。
2022/09/02
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