青らむ空のうつろのなかに (新潮エンターテインメント倶楽部SS)
青らむ空のうつろのなかに (新潮エンターテインメント倶楽部SS) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
7つの短篇を収録。いずれも物語の構築力といい迫真性といい、篠田節子の本領を存分に発揮した物語群である。巻頭の「幻の穀物危機」は、珍しくも性悪説にたったかのような人間観が冷徹に描き出されていく。もっとも、小説の中核は、危急存亡に立った時の都会人のひ弱さを炙り出すことにあるのかも知れないが。作家の想像力が縦横無尽に発揮された1篇。続く「やどかり」も怖い。ほんのふとした行為の連鎖から、深みにはまってゆくキャリア官僚を描いているのだが、対するのは少女のしたたかさなのか、あるいはそれは無垢であったのか。
2019/06/09
クリママ
7編の短編集。現実には起こらないにしてもそんな状況があるかもと思ってしまうホラー。首都圏の大地震後の食糧難、家を乗っ取ろうとする少女、ロボットによる老人介護等々。だが「水球」はありうる。突然会社がつぶれることも、突然離婚届けを付きつけられることも、自業自得であることも。このころの篠田節子らしいのキレのある短編集だった。
2019/06/29
kaizen@名古屋de朝活読書会
恐怖・推理小説短編7話 幻の穀物危機 やどかり 操作手 春の便り 家鳴り 水球 青らむ空のうつろの中に 穀物危機は、地震による一時的恐怖 やどかりは、計画的同居 操作手は、機械の手 春の便りは、老女と犬 家鳴りは、雪 水球は、球状の水で飼う魚の居る家の崩壊 青らむ空のうつろの中には、豚を飼う施設 それぞれ何か恐い話がある。
2013/04/22
星落秋風五丈原
母親から虐待を受け田舎の学校にやってきた少年、光。 彼は何をやらせても無気力だったが、目に光が宿るのは施設で飼っていた 豚の世話をする時だけ。そして不思議な事に豚も彼に心を寄せている 様子なのだ。ところがある日、豚が食用として外に出される日がやってきた… 「青らむ空のうつろの中に」他「幻の穀物危機」気を許した女子中学生がどんどん自分の生活に侵入してくる様子を恐ろしく想う「やどかり」
2001/05/26
クラミ♬
まさに「涙も凍る短編集」でした。著者である篠田節子さんにはいつも厳しい現実を突きつけられている気がします。
2017/03/29
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