時代小説の戦後史 (新潮選書)
時代小説の戦後史 (新潮選書) / 感想・レビュー
パトラッシュ
時代小説の面白さは、いかに魅力的な主人公を創造できるかがカギだ。柴田の眠狂四郎に五味の柳生十兵衛、山田の天草四郎に隆の世良田二郎三郎のような強烈な意志を秘めたアンチヒーローが生まれた背景には、作家たちの戦争体験があった。国の命令に従ったため生死の境をさまよった口にできない過去があればこそ、支配されるのを拒む男を描き続けたのだと。死を直視した衝撃と過去を忘れた戦後への憤りが、支配者に抗するヒーローを書かせる原動力になっていたのだ。4人が去った後の時代物から、血で血を洗う反逆者が消えた理由が納得できてしまう。
2022/01/24
史
時代小説の話ではなくて、時代小説家の話。内容を通して作家の内面を語っている。のだけれども、風俗史的なものではなくて、あくまで書かれた作品の読者に向けての解説に思えてくる。この本だけ読んでもあまり楽しめるものではない。
2022/07/03
Go Extreme
柴田錬三郎の偽悪: 大衆作家、柴錬の誕生 バシー海峡の漂流体験 不滅のヒーロー登場前の主人公たち 五味康祐の懊悩: 「おれはいちばん大事なものを売った」 「新潮」編集長、斎藤十一との運命の出会い 二度の自動車事故と一生背負わねばならぬ十字架贖罪と鎮山田風太郎の憧憬: 「私の人生は決して幸福ではなかった」 隆慶一郎の超克: 昭和という時代の終焉に 『葉隠』は面白くてはいけないのか 規格外の男たちの抗争『死ぬことと見つけたり』 補陀落渡海というモチーフ 坦々として、而も己を売らないこと 「海」という自由を愛す
2022/01/25
伊達者
分野違いであった。取り上げられているのは柴錬他一度も読んだことのない作家ばかり。筆者の個性的な文章と熱量に圧倒されるものの内容は,良く分らなかった。引用の文章で怪しげな気配は分るもののそれ以上は(以下略)。後は柴田錬三郎も五味康スケも写真の印象と違って若く,60歳前後で死んでいるのだ。自分の容姿と比べてやはり大物は風格が違うと感心した次第。でも忙しくて剣豪小説まで読もうという欲までは起きなかった。ネットで買うとこういう失敗もある。
2022/02/27
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