怪異猟奇ミステリー全史 (新潮選書)
怪異猟奇ミステリー全史 (新潮選書) / 感想・レビュー
夜間飛行
怪奇なものに美を見出した英でゴシックが再発見され、『オトラントの城』が成功、『ユドルフォ城の怪奇』『マンク』により恐怖の型が創出された。その後ゴシック小説は、心霊主義、オカルト、経験論哲学の影響を受け、狂気・夢・無意識・霊界と交叉しつつ、世界の謎を読み解く〝探偵〟を出現させる。『バスカヴィル家の犬』で超自然に挑む理性の人ホームズなど、『ユドルフォ城の怪奇』の主題が時代を超えて繰り返されるのが面白い。後半は、明治の翻案小説、新青年、乱歩のエログロと正史のモダン、新本格からパラミステリに至る流れを一望できる。
2022/05/12
パトラッシュ
ゴシック小説を源流とした欧米でのモダンホラー隆盛については、著者の『ホラー小説大全』で詳細に解説されていた。今回は同じ手法でゴシックやオカルト思想などがいかに輸入・咀嚼され、変格ミステリへと独自の発展を遂げたのかを検証していく。文学史では無視される心霊現象や骨相学にエログロまで取り上げるなど着眼点は面白く、新本格から怪奇幻想物に至る異端文学が形成される状況を手際よくまとめている。しかし能狂言や歌舞伎の題材となった怪異譚や無残絵、幽霊画などの影響には触れていないなど、海外文学偏重による見落としも感じられた。
2022/03/06
HANA
ゴシック小説から最近の新本格まで、ミステリの歴史を辿った一冊。前半がゴシックからドイル、後半が日本編となっている。単なる通史に止まらず要所要所を抑えた批評にも作品紹介にもなっているのは、著者の力量を感じさせる。とはいえ題名同様変格探偵小説に焦点を当てているせいか、日本ミステリの戦後の動き、特に社会派が隆盛してからは触れられていない。それでもスピリチュアルとミステリや生来犯罪者説、押川春浪等数多のミステリ史では触れられていない社会と小説の関わり合いは只管興味深いなあ。ミステリに興味あるなら是非読むべき。
2022/02/07
Shun
怪異猟奇という言葉に目が行ってしまいますが本書はミステリー全史の名の通り、その起源と考えられている英国ゴシック小説から現在の新本格ブームに至るまでの文学考察である。一言でミステリーと言っても、このジャンルには探偵小説以外にもホラー、幻想、SF、冒険といったテーマも含まれているので小説好きには読んで損の無い1冊と断言できます。興味深い論考が多く最後まで好奇心の高ぶりが収まりませんでした。西洋のミステリー小説が初めて日本に入ってきた際の翻訳事情がとても興味深く、黒岩涙香による翻案という手法が市民の心を掴んだ。
2023/01/15
メタボン
☆☆☆☆ 豊饒なる怪異猟奇ミステリーの世界の源流を解説する良書。後半の日本編についてもっと紙数を尽くしてほしかった。この本によりたくさんの積読本が出現。
2022/04/15
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