明治大正翻訳ワンダーランド (新潮新書 138)
明治大正翻訳ワンダーランド (新潮新書 138) / 感想・レビュー
yumiko
「緋色の記憶」の翻訳が素晴らしかった著者。以降本職ではないエッセイを追いかけること三冊目。今作は、日本の翻訳文学の勃興期、明治大正時代の作品を通して知る名作の誕生秘話が纏められた一冊。「復活」を訳した内田魯庵の前書きにはその涙ぐましい努力に心揺さぶられ、黒岩涙香訳述の「鉄仮面」にはマジで!?と驚愕。翻訳家である著者自身が感心したり呆れたり素直な気持ちを言葉にしてくれていることで、より作品たちが身近に感じられる。先人達の苦難の歴史を知ったことで、現代翻訳文学の層の厚さが改めて有難い。もっと読まなくちゃね!
2017/02/05
oldman獺祭魚翁
最近翻訳者さん達とお話しする機会があり、こんな本を読んでみました。文明開化と共に入ってきた海外文学 これを翻訳した翻訳者達の、苦闘と苦労を描いています。日本じゃ超有名な「フランダースの犬」やら当に「翻訳事始め」です。「乱訳・豪傑訳」から脱却しはじめた明治20年代から書かれている翻訳事情は当にワンダーランド。翻訳書が好きな方は一読されてはいかがでしょう?
2018/06/13
Nobu A
鴻巣友季子著書5冊目。近代化革命が起きた明治維新の屋台骨を支えていたのは翻訳と言っても過言ではない。西洋文明と文化は翻訳を通して流布され浸透したのだから。古くは通詞から始まる先人達の熱量や苦悩を筆者のいつもの軽妙な筆致で紐解く。出だしは面白いなと思い、読み進めたが、集中力が徐々に途切れていった。どうしてだろう。細部に拘り過ぎていたようのに感じる。例えば、海外では翻訳者名が出版物に出ないことが多い。このような国際比較があり、翻訳業界の全体像が俯瞰出来ると読み易かったかも。残念ながら後半流し読み読了。
2023/03/11
あいくん
☆☆☆明治大正の翻訳でいまも読み継がれる「小公子」「鉄仮面」「復活」「フランダースの犬」「人形の家」「オペラの怪人」など触れています。鴻巣友季子さんはまさに全身翻訳家です。明治の翻訳家たちの訳文を読むと、本を飛び出して迫ってくる情熱や気迫、思い入れが感じられるといいます。鴻巣さんにとって翻訳は驚きの宝庫、果てしない世界に続く不思議の窓です。即興詩人、小公子、ジュリアスシーザー、ハムレット、十五少年漂流記、レミゼラブル、罪と罰、鉄仮面、モンテクリスト伯、フランダースの犬はこの頃から翻訳されていました。
2020/01/25
はるき
文学の歴史を紐解くと思わぬ発見がある。翻訳家というと私の中ではやっぱり「赤毛のアン」の村岡花子さん。でも、彼女の前に長い長い歴史があるわけだ。好きな作品を自分の言葉で肉付けできる。翻訳家が女性に人気な職業というのも何か分かるな。
2015/07/02
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