日本の近代 下: 教養としての歴史 (新潮新書 262)
日本の近代 下: 教養としての歴史 (新潮新書 262) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
福田和也の日本近代史下巻。関東大震災から敗戦まで。日本近代史お馴染みの、あれよあれよと悲惨になる展開だが仕方ない。海軍善玉論は無く、陸軍を昭和のデモクラシーを担った政治集団だと説く。言われるとそんな気もする。史上評判の良い米内光政を「最大の戦犯として糾弾されるべき人物」山本五十六を「(勤務経験が長かった米国の事を)実際は全く理解していなかった」「無責任」と評する。人物評がチラッと出る瞬間がやはり面白い。著者が不意に立ち上がるのだ。あとがき『「敗戦」は悪くない結末だった』はちょっと感動的である。
2015/10/29
fseigojp
日比谷焼き討ちは徴兵され死んだものたちの抗議であり、第一次大戦で総力戦が必至となり普通選挙制が実施された 統制派軍部・革新官僚・重工業産業界の独走が満州国建国へ。。。アメリカの機嫌を取る気が全然ないのが魔訶不思議。。。。そのあたりはドイツも一緒なんだが
2015/08/01
小鈴
新書二冊にして日本近代史の完成度が高い良書。あとがきの202ページ以降の著者のメッセージは、これを書くために近代史をまとめたとさえいえ、胸に響く。「大正期に生きる意味や人生の理想を求めた世代が〜国体の明徴を求め〜精神主義的、理想主義的な方向に引っ張っていってしまう。〜天皇機関説批判とは、すぐれて昭和的なデモクラシーに他ならなかった」「自分らしさという発想は、実は国体とたいして変わらないのではないかと危惧しています。それは、日本人が現実感覚を失っていく兆候に他ならないから。」歴史の教訓を生かしたい。
2009/07/12
inokori
新書2冊で日本の近代史を概観できるという点ではなかなかお得.特に上巻は,歴史学者の新しい研究成果からの引用も多く,手堅い感を受ける.はっきり言ってしまえば,上巻は加藤陽子氏の著作を中心に手を広げていくことでもっと深い理解が得られるかもしれない.一方,日露戦争後から大東亜戦争を扱う下巻は,これまでリベラルと評されてきた海軍提督陣(米内光政や山本五十六等)への世評への懐疑が呈せられているのが類書と違うかも.著者に期待されそうな思想史的要素に禁欲的なのが,歴史書として成功した要因かも.
2010/09/12
takizawa
上巻が日本の近代国家成立の過程を描写しているのに対し、下巻ではなぜ日本が無謀な戦争に突き進んだのかに焦点があてられている。あとがきの問題意識を興味深く読んだ。「大正期に、生きる意味や人生の理想を求めた世代が、昭和になって社会の中核を占めた時、強力な推進力で、日本の政治から現実性を奪い、精神主義的、理想主義的な方向に引っ張って」いった。国体から日本人が解放されたのは、敗戦により繁栄という具体的な目標ができたから。福田は、国体と、現代の「自分らしさ」ブームが似通っているように見えると警鐘を鳴らしている。
2009/10/22
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