山本周五郎長篇小説全集 第三巻 さぶ
山本周五郎長篇小説全集 第三巻 さぶ / 感想・レビュー
KEI
ん十年ぶりに再読。やはり周五郎の作品は心が震える。経師屋職人の栄二郎は器用で男前、さぶは愚鈍だが誠実。本書は栄二郎が濡れ衣を着せられ、職を失い、失意と復讐の思いを深めて寄せ場に送り込まれてからの成長物語とも受け取れ心温まる物語だ。栄二郎を頼りにするさぶではあるが、栄二郎が死にかけた時、目に浮かんだのはさぶの姿であった。人はひとりでは生きられない。栄二郎を支えて来た人々を代表してさぶが居るんだと思う。栄二郎がいてさぶが、さぶがいて栄二郎の今があるのだ。最後の「おらだよ、ここをあけてくんな、さぶだよ」に泣けた
2018/10/11
キムチ
この全集、「脚注が凄い」と言うのは宣伝文句だろうが、確かに詳しい・・過ぎる。というのは、この程度の言葉を説明しないといけないほど、死語化した言葉は増えているのだろうか。 装丁が胸を打つ。栄二とサブ・・一方が泣いている。 「さぶ」なのに、大半は栄二の叙述。 3回。目頭がジンと来た・・あ~、私って、まだ感性が柔らかいのだなんて妙に独りごちてしまう。 巻末で葉室氏、奥野氏も言う 「栄二が自らに問いかけ、再生復活をして行ける」のはさぶの存在あってこそ。ラストの言葉「あけてくんな、さぶだよ」は胸が熱くなった。
2013/10/06
housetop16
名作と言われる所以が分かった。全台詞が人生箴言に思える。また読もう。 何なんだこの胸に溢れる熱いものは。
2022/03/21
Kaoru
面白かった。不器用なさぶと、何でも器用にこなす英二。悲劇が英二を襲い堕落していく。ただ、信じて待つさぶ。人間、根っこのところが腐らなければ、何度でもやり直せると思う。
2019/03/04
たまネギ子
どれだけ孤独が好きでも人は一人では生きられない。どれだけ人間が嫌いでも人は憎悪や恨みだけで生きられない。他者とかかわりあうことの大事さを教えてくれる作品でした。あとがきにあるように、少しキリスト教的な感じがします。
2017/03/30
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