山本周五郎長篇小説全集 第二十五巻 火の杯
山本周五郎長篇小説全集 第二十五巻 火の杯 / 感想・レビュー
訪問者
山本周五郎の現代物、と言っても戦中と終戦直後の話であるが。山本作品としてはまあまあの作か。いずれにしろこれでやっと山本周五郎長編小説全集を読了したわけであるが、読んだかいのある素晴らしい読書体験だった。ベスト5は「天地静大」「ながい坂」「樅の木は残った」「青べか物語」「さぶ」の5作か。これから短編も読んでいかなければ。
2017/06/28
しさあ
山本周五郎らしからぬテーマかと思う。財閥解体と戦争によって浮き彫りにされた人間の汚さ愚かさを描いている。が、同時に大きな権力下に置かれ抵抗を諦めるばかりだった一人の人間が、人生を取り戻そうと目覚めることで、人間の「善」の部分、芯の強さも同時に描く。
2023/10/24
マウンテンゴリラ
江戸時代を背景とした、または、現代を舞台にしたものでも、貧しい庶民を描いた周五郎の作品を読んできた中で、終戦直後のいわゆる財閥や旧華族の人々を描いたという点で新鮮さを感じた。物語の展開にもサスペンス風な要素が有り、そういった面からも楽しむことが出来た。ただ、人間に対する悲哀、共感、慈しみという点においては、これまでに読んだ小説ほどの味わいが感じられなかった。そんなわけで、本作品からは小説の味わいというよりも旧財閥というものの歴史的意味といったようなことについて考えさせられた。→(2)
2016/08/23
デントシロー
戦中、戦後の財閥といわれる人々の実情が書かれている。物質欠乏の時代、民衆は食べるものにも困窮している中そんな苦労は何一つなく、ただ同族間のいさかいに暮れている異なった社会である。物質の調達に苦労する一般人と同族間の人間関係に苦悩する主人公の康彦を通して人間はどんな境遇にあっても同じ煩悩だらけの人生であると周五郎は書きたかったのであろう。上流会における生活で生きる目的を失った康彦が夏子と知り合い生きる力を取り戻す過程は俗っぽいが面白く読める。夏子はかつって康彦が愛した家政婦の娘であり人間関係のややこしさも物
2015/02/07
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