隆慶一郎全集 第5巻
隆慶一郎全集 第5巻 / 感想・レビュー
西村章
未完の長編が五篇。「花と火の帝」は初読時に、これほど圧倒的に面白い作品がこんな山場で未完になってしまうのか、と髪の毛を掻きむしりたくなったけれども、今読んでもやはり同じ印象を持つ。「かぶいて候」も「銚子湊慕情」も「吉野悲傷」も「夜叉神の翁」も、完結していればバツグンに面白かったであろうことはまちがいないだけに、じつに惜しい。短編四篇もそれぞれに独特な味わいがあるけれども、「死出の雪」は最後の短編になったことが関係しているのかどうか、ちょっと他の作品にはない無常観も漂う気がするのは、うがち過ぎかな。
2021/01/03
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