マイ・ロスト・シティー: フィッツジェラルド作品集
マイ・ロスト・シティー: フィッツジェラルド作品集 / 感想・レビュー
空虚
馬鹿騒ぎの後の静けさ、過ぎ去った幻のような日々、夢の終わり。姿を現す身も蓋もない現実。失われてしまった、人を成り立たせているような何か。どの物語もまるで『グレート・ギャツビー』をなぞるかのよう。この本の読後感を味わいたければ、試しにエンパイア・ステートビルからニューヨークの街を見下ろしてみればよい。自分がいかに小さな世界で生きているかが分かるから。「ニューヨークは結局のところただの街でしかなかった、宇宙なんかじゃないんだ」(『マイ・ロスト・シティー』)。
2016/05/09
29square
再読、昭和56年刊行なのか…時代は遠くなりにけりと思いを馳せる。収録作「残り火」はいまは他でも読めるのだろうか、フィッツジェラルドの最高傑作短編のひとつだと思う。当時高校生の自分には悲愴過ぎると思われたが今読むと力強い話に思える不思議。
2023/11/10
しらい
冒頭の村上春樹さんのいうような「甘さや風俗を脱し、厳しい現実を直視しつつ、なんとかそれを乗り越えていこうとするフィッツジェラルドの姿をみることができる」作品群。程度の違いこそあれ、それぞれの絶望が、いろいろな形で受け入れられていく様子が、自分と重なるのに遠くなく、じんわりとした追体験的な読後感があった。
2016/01/17
yuzi
初・フィッツジェラルド!村上さんの文章読みやすい。すらすら読めます。時代の寵児・フィッツさんの短編集全6編と村上氏によるフィッツ評。この時代の雰囲気がすらすら~っと空気を介して伝わってくる感じ。でもやっぱり北米文学って好きになれないなぁ。文化が未熟だからかな。面白味を感じない。話そのものは面白く読めるのですが、登場人物の背景や世界観が受け付けられない。作品を、というよりは作家の人生を通してこの作家が書く文章には興味深いものがある。
2020/11/27
テトラ
短編集。それぞれに魅力的な物語でありエッセイ。第一次大戦後のアメリカ及びフィッツジェラルドの幻滅感が、この一冊を介して肌に感じられる。 フィッツジェラルドの真に迫った物の見方と、つねに漂う哀愁、それを的確に表す文章力に舌を巻く。比喩表現は抜群だ。村上氏の翻訳もいいのだろう。彼がもう少し堅実な作家だったら、生前の評価も生活も大きく変わっていたのではと思いをはせるが、派手好みのエゴイストでなければこんな小説は書けなかっただろうな。 読んだのは中央公論社刊のものです。
2017/09/11
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