スティル・ライフ
スティル・ライフ / 感想・レビュー
chantal(シャンタール)
読んでいて懐かしい気持ちになったのは、村上さんを思わせるリズム感だからだ、と気づく。なんとなくフワフワとしていて、ちょっと現実離れしていて。登場人物たちが語る山の形や、川の流れや、星座の輝きや、地層の美しさや、独り佇む草食動物や、目の前で光っているかもしれないチェレンコフ光や・・「美しい文章を読みたい」と言う私の願望を叶えてくれる、そんな池澤さんの文章が目にも心にも優しく響く、大好きな作品。
2021/01/04
メタボン
☆☆☆☆ いつまでもしゃぶっていたいラムネの飴玉のような文章。池澤夏樹は初読だが、この文体は非常に好み。スティルライフ、ヤーチャイカ(私はかもめ)ともに、宇宙に関する話が出てき、その描写の静謐なたたずまいが良い。ヤーチャイカに挿入されている「少女が恐竜を飼う話」が、何とも言えない深みを与えている。お気に入りの作家になった。「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。世界ときみは、二本の樹が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。」
2015/04/27
ほりん
読友さん方の素敵なレビューに惹かれて手にした。読後,浮遊感と酩酊感でしばらくぼーっとしてしまった。透き通った冷たい空気がピンと張りつめているような雰囲気と鮮やかなイメージに心をもっていかれた。宇宙にまで引き上げられ,地球に降り注ぐ光の粒子を見ているような気分になった。「スティル・ライフ」の雪,「ヤー・チャイカ」の霧のシーンが鮮烈。その一方,物語には生臭い事情も見え隠れしていて,ハラハラもさせられた。めったにない読書体験だった。
2015/01/23
ぶんこ
なんとなく芥川賞と自分が合わないと思っていましたが、こちらも好みとは言えなく、途中で挫折しました。
2016/04/28
Speyside
池澤夏樹は初読。中編2篇。静かに凪いで染み入る文章。人間の孤独が肯定的に描かれていると感じた。宇宙空間を駆ける探査機と惑星が一瞬だけ出会って別れ、また何もない空間をどこまでも飛行していくように、人間も友人や家族と出会い、いつしかまた別々の道を行く。あるいはある時点の自己に別れを告げて、また別の自分と出会うことを繰り返していく。どこまで行っても一人だが、今この瞬間に世界に確かに存在しているというソリッドな感覚。わかる気がする。臨界事故の印象が強かったチェレンコフ光、とてもロマンチックな描写で印象が変わった。
2021/03/02
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