蕭々館日録
蕭々館日録 / 感想・レビュー
散歩いぬ
大正末期の文士の生活を幼い女の子の視点で語らせるとは。久世さんの、大正時代と芥川龍之介への愛しみが倍増すようだ。あ、「愛しみ」は「かなしみ」と読んでください。 主人公・麗子の文芸批評の的確さもさることながら、五歳の童女が芥川こと九鬼さんに持つ恋情が恋に恋する女そのもの。芥川の鋭利で儚い艶やかさはどうだと言わんばかりである。久世さんと麗子の妖しい一体感に舌を巻く。得意の文体模倣も見事で、散りばめられた文学的ペダンティズムは大正文士ならずとも読者にとってもおおいに愉しい。つづく
2012/03/18
藤月はな(灯れ松明の火)
5歳の聡明な女子、麗子の観察眼や「私の家族ってちょっと変」という考えに共感しました。当時の文学界の事件や自分の知っている文豪たちが登場したり、麗子の家族が意外な文豪と親戚関係にあるということにびっくりしまくりました(笑)ユーモラスだけれどもどこかひねくれている当時の愛すべき文豪たちと共に同じ時を過ごした麗子が羨ましくてなりません。
2010/04/01
夏子
再読。本当に魅力的な今は過ぎ去ってしまった大正昭和の文士達の物語。
2017/12/16
rodinnk
大正から昭和へ。移りゆく時代の中で高等遊民さながら蕭々館に集まる個性豊かな人々。お馴染みの面子で文学論を闘わせたかと思えば隠れんぼや昼寝をしたりもする。それらを当館の娘である麗子の視点から語られる点が、面白い。5歳の視点であるから、大人たちの子供じみたしょうもないあれやこれやも、コミカル且つ必然性を帯びてみえる。この時代の文士らの熱量がじんわりと伝わる、良作。
2016/03/17
わっぱっぱ
実はまだ読了していないのですが、余りにも素晴らしくて叫び出したくなる衝動を紛らすため、ここへ来ることに。 久世光彦初読み。艶のある文章が作品とぴったりで、大変気に入ってしまった。お酌番をしながら文士達の会話に耳を傾け、「病める才人」九鬼を、一体感をもって見つめる麗子が5歳とは、いくらなんでも幼すぎるのだけれど、不思議なことに違和感がない。 そして九鬼が、どうにもこうにも魅力的で・・・惚れてしまう。著者の、文学への(とりわけ芥川への)愛が満ち満ちていて、酔いしれる。 さて、続きを。
2015/10/01
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