貴門胤裔 下
貴門胤裔 下 / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
舜銘もまた一門の者として、これらの苦難を経験してきた「当事者」であるのだが、自身に対する描写は少ない。むしろ家族達に起こった様々な出来事を「傍観者」として捉えた内容の方が多い。それが、ただ没落した身を嘆く貴族の感傷的な話に終始しなかった要因だろう。京劇の台詞がごく普通に会話の中に登場し、由緒ある骨董物が家の中には無造作に転がっている。『采桑子』の一節からタイトルが取られている本作は、全九章から成り、それぞれが独立した短編としても読める。兄や姉、祖母が各章の主人公となるが、別の章では脇役として再登場する。
2006/10/21
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