四十一炮 下
四十一炮 下 / 感想・レビュー
白義
この小説を支配している原理、存在があるとすれば、それは肉である。肉を中心に人が動き価値が二分され肉への欲望と肉の欲望が語りをこってりぎとぎとに盛りまくる。そして唐突に猛烈な勢いで終局を迎える。読み終わるとリアリズム的な部分も実は乱痴気騒ぎの幻想的祝祭時空の中にすっぽり収まっていたことがわかり、読者は満腹になるだろう。こういう小説に向き合う態度はただひとつ、物語への食欲と腹を大いに空かして、一気呵成に全編を暴飲暴食暴読することのみなのだ。フィニッシュの爽快感は莫言作品でも屈指
2012/11/07
atomos
上巻の不穏さとは打って変わって、下巻は大食い選手権があったりして賑々しかった。フィナーレのぶっ放しっぷりには、口あんぐりだ。莫言さん、おそろしい。
2012/06/03
多聞
肉と会話できる能力の持ち主である男が、まさに肉なしでは語れない栄光と没落の少年時代を語り尽くす。中国の農村の物語を、中国古典と『ブリキの太鼓』とマジックリアリズムなどを加えて調理し、味付けをすると、どうやら異質かつ特上の肉料理が出来上がるようだ。この一品を幸運にも食べる機会を得た人は、食中毒を覚悟で骨の髄まで味わうべし。
2011/09/01
志ん魚
土に根差し、力強い推進力をもった物語自体の面白さと、その物語がどこまでも斜め上を行き続ける面白さ。これぞマジックリアリズムか。違うか。さらに今作ではスティーヴ・エリクソンばりの幻視世界も絡まって、『白檀の刑』とはまた違った莫言の本質を見た気がします。またあとがきで、「この物語にはなんの意味もない」などと言ってのけちゃうのも印象的。まさに「語りこそすべて」なんだろうな。
2011/01/07
Aoka
「白檀の刑」は怖そうだし「赤い高粱」は手に入らなかったので、この本を読了。プロットや伏線より、勢い重視で少し物足りなかった。マジックリアリズムやホラ話系って、やたらおもしろいのと、勢いだけで付いていけないのと分かれる感じがある。
2010/09/09
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