谷崎潤一郎伝: 堂々たる人生
谷崎潤一郎伝: 堂々たる人生 / 感想・レビュー
i-miya
2010.09.04 (小谷野敦)1962生まれ。東京大学文学部英文科卒。同大学院比較文学比較文化専攻課程修了。学術博士。ブリティシュ・コロンビア大学留学。(資料提供者) 観世恵美子。P430 (跋文) 本書は、谷崎潤一郎の詳細な年表を作ることから始まった。近親者が死を迎えたような不安。自分自身の死。不安と衝撃。谷崎先生の人生に没入した。幸福と辛く悲しい気持ち。水上勉-目をかけられた一部の人々。弟妹への面倒。東大教授が学生に読ませたくない本・・・。
2010/09/07
nonpono
谷崎潤一郎は京都あたりの雅なところで生まれと思い込んでいたら、東京の日本橋生まれで、関東大震災を契機に関西に移り住んだのですね。多くの兄弟縁者の面倒を見たり、お金がないから小説書いたり、大邸宅を維持するために借金したり、印象が変わる。また、若い時は神経衰弱で電車に長く乗れなくて悩んだり(今でいうパニック障害か)、歌舞伎から宝塚のショーやストリップをお気に入りの女の子を連れて見に行ったり、意外性を感じた。「自分の仕事は今認められなくとも後世に必ず評価される」と晩年に書いていてその矜持とかっこよさに痺れた。
2024/11/18
つちのこ
谷崎の生から死まで、丸裸にしたような力作。複雑な家族関係と女性遍歴が谷崎文学の底流を形作るネタとなり、肥やしになったことを改めて実感した。谷崎文学を特徴づけるマゾヒズム、フェティズム嗜好がどのように生まれ、成長し、開花したのかを文学的見地からも掘り下げて欲しかったところだが、さらりと読んでしまえば、谷崎潤一郎は、面倒で偏屈なただの女好きのオヤジにしか映らないところもある意味人間味あふれて興味深い。未公開の書簡もまだ残っているというから、著者の谷崎研究がさらに発展することを期待したい。
2022/05/09
パブロ
新しい全集が出るんだよね〜。ミルキィ・イソベのカッコいい装幀なんだよな〜。でもクソ高くて買えないよ! ってなわけで、これから文庫でシコシコ読む前の予備知識。一般的な評伝って無味乾燥だけど、この著者の評伝はチロチロと著者の本音が顔を出し、それがとても面白い。女をめぐる谷崎の冒険。そして、家長である谷崎の苦悩。そこから文学へと昇華させる谷崎の貪欲さ。この著者、『川端康成伝』といい、ホント丹念に重箱の隅まで突いて調べるよな〜。その執拗さから浮かび上がる谷崎の巨大さに、ますます小説が読みたくなること必至!!
2015/03/25
石光 真
面白い。ゴシップOKなのは英米の文芸評論の伝統なのだという。私も一葉の小説より先に一葉の日記を愛読した。文より人のほうが面白いことはある。谷崎については、神経症を克服して文豪になり、最後まで憧れの女性に求愛をしていたという、堂々たる人生ぶりを本書は描くことに成功している。生の作家だから死を恐れたというのもね。著者が男らしい実務家である谷崎先生を尊敬し、丁未子に同情していることに共感できる。松子への失望と諦念という洞察も。その上で、私は読後、谷崎の文への興味も失っていない。頭のいい、模索の作家なんだ。
2017/11/26
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