ことば汁
ことば汁 / 感想・レビュー
ろくでなし@ぐーたら中
67点 直感で手にしてみれば幻想譚。というよくあるパターン。独身のアラフィフ女性をほぼ主人公に据え、その生活と心情を軸に描く風変わりな短編集。一貫して感じるのは、不安や孤独のその先にある世捨て感というか一種、厭世的な漂い。本能的な欲望や嫉妬、渇きがテーマと思われるが、なまめかしいエロティックさと微量の毒素が丁度よい。確たる表現の巧さがあり幻想世界への移行も自然。何より文章がキレイ。きっと繊細で鋭敏な感性をお持ちなのだろう。などと思っていたら小池氏は詩人だとか。ナルホド、だからか。「ことば汁」がホトバシル。
2014/03/12
芍薬
健全な?人が読めばなんだか不思議な話で終わってしまうんでしょうが、孤独な人には怖い話です。どちらかというと孤独な独身女側の私は震え上がってしまいました。平凡で孤独な毎日にスルリと異世界が重なります。
2012/11/25
Roy
★★★★★ 大好き。皆さんおっしゃてるように、現の世界から幻想の世界へ移行する境目がとても自然で、それが独自の特異な世界であっても、ふわりと跳ぶ感覚で入れるのが非常に心地よい。また、その世界が美しいだけではなく、退廃的な面妖さを兼ね備えているのがとても好き。
2008/12/22
八百
新聞の書評で印象に残った本を図書館で見つけて読んでみた。内容は悪くないのだが…。今風に言えばアラフィフの薄幸で孤独な女子の揺れ動く惑い心をミステリアスに綴った短編集。でも当たり前かも知れないが同世代の男心には残念ながらあまり響くところはなかった。「歳を取って体型も崩れて…」云々の自虐的な表現は嫌だな。今日日のオバサン(失礼)はもっと輝いて胸張って生きてるんじゃないの。それとこのジャンルは川上弘美や小川洋子の得意分野だから信者の私には見劣ってしまったこともある。「花火」とかいい雰囲気出してるんだけどなぁ
2013/05/20
guu
タイトルの汁(じる)という濁った響きがまさにピッタリの、人の心の奥底に眠る黒い靄のようなものを丹念に描き出した本書。この短篇集はそうした人それぞれの(じる)が、何かしらをきっかけに滲みだしジワジワと拡がっていくさまを幻想世界と巧みに組み合わせ、類のない世界観を作り上げてありました。なかでも思いが姿形を変えていく疾走感ありありの「つの」と、<舌切り雀>をモチーフにしたホラー色の強い「すずめ」の2作は非常に引き込まれる作品でして、あと「花火」の高揚感と寂寥感の対比も好きでした。
2011/06/14
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