これでよろしくて?
これでよろしくて? / 感想・レビュー
さてさて
私達は『仕事の場』で、『友だちとの関係』で、そして『家族関係』で、人間関係を円滑に回していくことに日々心を砕いています。自分が正しいと思ったことであっても必ずしも相手が同じように捉えてくれるかは分かりません。でも、だからといって私達はそのことを諦めてはいけません。主人公の菜月も色んな人との関わり合いの中から彼女なりに前を向いて歩いていくための答えを見つけることができました。『いろんなことに立ち向かってみよう』と顔を上げる菜月の姿を見るその結末に”それでいいよね”と清々しい気持ちで頷きたくなる作品でした。
2021/11/29
ヴェネツィア
川上弘美さんの純リアリズム小説。夫の光と暮らす菜月、39歳。物語は終始彼女の視点から語られる。お片付けが苦手なところなど随所に川上弘美さん本人を思わせるところもあるが、あくまでもフィクションだ。彼女と夫、姑、夫の妹、夫の弟の妻をめぐる人間関係の機微がテーマ。そして、菜月のそうした日常を照射していくのが『これでよろしくて?同好会』だ。また、本書はささやかながら小説における言葉の効果の実験をも試みており、「おためごかし」、「死屍累々」、「させるという使役」などがそれにあたる。ただ、最後にもうひと花欲しかった。
2013/07/29
傘介
ふわふわとやや弱気な主婦の日常が『これでよろしくて?同好会』参加を機に激変!なわけはなく。だが確実に菜月は自己の内面を手探りで彷徨い始めるのが実は冒険的。主婦たちのなんとはない会話場面も、川上さんが描くと異界を覗きこんだ気持ちになってくる。ところで、ん?結婚8年目ってどこかで聞いたような、と思ったら最近読んだ『つまのつもり』(野中ともそ)もそんな設定だったか。結婚数年目で立ち止まり、吐息を漏らす。そして見渡し、あれ、と小さな光や闇の存在を見つける。タイプは違うがどちらも絶品、妻のつぶやき思考小説だったな。
2014/05/20
風眠
どうでもいいような、よくないような。そういう日々の小さな困惑を議題にして、淡々と話し合う「これでよろしくて?同好会」。さまざまな立場、年齢層が集ってのガールズトークは、これと言った何かが起こる訳ではないのだけれど、話している内容がコミカルで奥深い。作中にもあったけれど、こういう話をしているグループとカフェで隣になったら、きっと私も聞き耳たてちゃうなぁ。ラスト近くで、実はこの同好会は主人公の菜月を助けるための幻だったのよ・・・と思わせておいて、そんなことある訳ないじゃん!と読者ごと騙す仕掛けが小憎らしい。
2014/01/12
そら
結婚して8年目、まだ子供を持たない菜月は二歳年上の夫と二人暮らし。ある日、元彼の母親にバッタリ出会い、「これでよろしくて?同好会」に入会する。女性同士、大の大人が日常のなんてことない小さな疑問に食事をしながら真剣に討論する様子が斬新で面白い。ある日、菜月の家に義妹と、続けて義母が転がり込んでくる。しばしの同居の間に菜月は"家族"とはなにか?という疑問にたどり着く。ほんの些細な違和感とか、表現しづらい気持ちとか、もやもやモジモジしながらも見出だし成長していく。家族や夫婦の形はいつだって変化していくもの。
2022/09/15
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