蛙鳴
蛙鳴 / 感想・レビュー
まさむ♪ね
ほとばしる大陸の女たちのパッション。そうこれは女たちの情熱大陸だ。まったく爽やかじゃあないし、生易しくもないけれど。言わずと知れた中国の一人っ子政策。国家権力による強制堕胎、パイプカット、代理妊娠、飛び交う強烈な言葉たち。格差の空に響き渡る怒号と悲鳴。大陸を飛ぶように躍動する名産婦人科医伯母さん、その助手ちびライオン、語り手オタマジャクシの妻王仁美、悲劇の代理妊娠者陳眉、みんななんてパワフルな女たちなのだろう。生命力と希望にあふれでも笑わずにはいられない、物語を象徴するような心揺さぶるラストがすごく好き。
2015/09/05
nbhd
はじめての莫言氏。これが、んまぁ、ぶっ飛ぶほど面白くって、今もやや宙に浮いたような気分で居る。はんぱないエネルギー、マジでこれ叫びたくなるくらい面白い。産婦人科医として数多の出産を手掛けつつも、一人っ子政策を推進する国の走狗として時に”2人めの子”の死刑執行人にもなる、あまりに力強く破茶滅茶な伯母さんを中心に描かれる大絵巻。グロテスクで愉快、深遠かつメロドラマチック、ぎりぎりの「生」をめぐって攻防を繰り返す登場人物たちの壮絶極まる「必死さ」には国側であれ人民側であれ誰しもに惚れた。万歳、莫言先生!!
2014/11/11
fseigojp
モー・イエン初体験 こりゃ、しばらく中毒になりそうだ 大江健三郎はグロテスク・リアリズムと呼んだが 大変な力量だ 中国の一人っ子政策の光と影
2016/02/13
syaori
一人っ子政策について切り込んだ作品です。作家オタマジャクシが助産婦だった伯母について語る形式で進みます。伯母はたくさんの子供を取り上げますが、国の政策に沿って多くの胎児を殺しもします。その中で、2人目を妊娠して堕胎の手術を受けることになったオタマジャクシの最初の妻も命を落とします。当時はこのように命を落とす女性が多くいたのでしょう。一人っ子政策が現代でも多くの問題を抱えたままであることも示されるなど、決して軽くはない内容なのですが、それを時に軽妙に、時に重厚に描き、一気に読ませるのはさすがでした。
2016/02/29
三柴ゆよし
かたや聖母にも似た生命の導き手として、天文学的な数の嬰児を取り上げ、かたや国家の走狗として、未生の生命を容赦なく摘み取ってきた産婦人科医の業と哀しみを描く。劇作家を称する主人公が最後に完成させたのが、結局のところ、自分や伯母に対する「弾劾」とも「救済」ともつかない戯曲であるという点については評価が分かれるだろうが、闇に葬られた無数の胎児の、そうしてまた中国という途方もない国の暗部に住まう、声持たぬ者たちの挙げる慟哭の声を結晶させた本書は、やはり莫言の代表作にふさわしい。傑作。
2011/09/04
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