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春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと

春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと

春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと

作家
池澤夏樹
鷲尾 和彦
出版社
中央公論新社
発売日
2011-09-08
ISBN
9784120042614
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春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

3・11東日本大震災をめぐる池澤夏樹のアピール。前半は死者や犠牲者に心情的に寄り添ってゆく、いわばレクイエム。そして、後半は起こったことに対する彼の思索が語られてゆく。人は喪失を受け入れる。それは、そうするしかないからだ。春を恨んでもいいのだが、それは諦念の中に受容されてゆくしかない。地震と津波とは天災だった。したがって、我々にできることは哀しみを共有することしかない。しかし、原発事故は人災だ。そこでは「安全」は大前提だったのだから。だから緊急時のマニュアルも対策も何もなかったのだ。今に至るもそうなのだ。

2015/05/02

Hideto-S@仮想書店 月舟書房

季節はめぐり、また春はやって来る。悲しい思い出を連れて来ても、春を恨んだりはしない……。東日本大震災に寄せたエッセイ、コラムを再構成した本。作者の悲しみ、怒り、そして『揺らぎ』が行間から立ち上ってきて、短い本だが心に響いた。被災地への支援はFeed(与える)ではなく、Share(補う)であること。原発に代わる再生可能エネルギーの必要性。政治やジャーナリズムに対し白けてはいけないという意志。「我々はみな、圏外に立つ評論家ではなく当事者なのだ」から。タイトルはヴィスワヴァ・シンボルスカの詩から採られたもの。

2016/03/01

ぶち

読友さんのレビューで手に取りました。池澤夏樹さんが、被災地を歩いて、自らの目で耳で見聞きしたこと、考えたことを、淡々でいて明確な文章で伝えてくれます。その文章には死者に対しても残った人に対しても深い思いが籠っています。池澤さんは、自然災害を受け入れて黙って先に進んでいく心情は諸行無常を当たり前の事とする民族なのだろうとしています。それから転じて人災であった原子力発電の不可能性と政治への期待を記しているのですが、あれから10年、為政者には期待を裏切られることばかりです。まったく、変わっていません。

2021/03/15

jam

“深草の野辺の桜し心あらばこの春よりは墨染に咲け”古今和歌集に収められたこの歌は震災後の著者の心に深く寄り添い、著書「詩のなぐさめ」「うつくしい列島」の中でも引かれている。震災から6年目の昨年の今頃、私はふたりの人を見送らねばならなかった。生命の間近にある自身の職業観さえも揺るがされるほどの別離だった。いつか見た写真のなかに咲く福島の桜は、咲き誇るほどに果てしなく、おのずとこの歌が想われた。今年も列島の桜が咲く。逝った季節は二度と帰らない。それでも春が来ることに人は慰められる。私に去年の桜の記憶はない。

2018/03/10

どんぐり

3.11の年に「震災をめぐって考えたこと」を著したエッセイ。写真家の鷲尾氏が被災地で撮った白黒の写真も載っている。まえがきには、「これらすべてを忘れないこと。今も、これからも、我々の背後には死者たちがいる」とし、池澤氏が震災以来ずっと頭の中で響いていたというシンボルスカの『終わりと始まり』の詩を引用し、震災による何万という人の死に思いを馳せている。「またやって来たからといって 春を恨んだりはしない 例年のように自分の義務を 果たしているからといって 春を責めたりはしない わかっている わたしがいくら悲しく

2016/07/14

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