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極北

極北

極北

作家
マーセル・セロー
村上春樹
出版社
中央公論新社
発売日
2012-04-07
ISBN
9784120043642
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極北 / 感想・レビュー

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R

滅び行く世界を舞台に、文明や文化について考えさせられる小説でした。生きていくとはどういうことか、希望とは何を示すものか、主人公の気持ちにはっきりと理解を示すことはできないけども、絶望的に荒涼な世界で、文明社会とのふれあいというものが、いかに難しく、脆いものかを思い知らされるようでした。ロストテクノロジーに触れることが、憧憬なのか、懐古なのか。生きていく自分はそれら過去の積み上げの結果であるという示唆、それを受け継ごう、渡そうという意思を抱く様が、力強く明るく見えた。

2019/05/28

どんぐり

世界は洪水や疫病や戦争で破滅に向かい、飢えた人々の群れが南から続々とやってきた。混乱を極めた年月が過ぎ、いつのまにか極北の地で一人となってしまった女。何があったのかは明らかにされないまま、この地を出て行くメイクピースの旅路。狩猟、殺し、囚人と看守人。どこまで行っても絶望という文字がついてまわる近未来小説。これが面白いと言えるほどには理解していない。マッカーシーの「ザ・ロード」は再読してもいいけど、村上春樹の訳だからといってこれは再読しないな。

2022/09/14

chiru

村上春樹、翻訳ということで、期待して読んだ。終末世界の訪れた近未来、極寒の地シベリアで生き残ろうと模索する女性が主人公。主人公の取る行動、会話のひとつひとつに、必ず意味があって、それが生死どちらを選ぶ選択でも、彼女の勇気を称賛したくなる。文章、言葉の間から主人公の秘めた思いが溶け出すようなすばらしい翻訳でした。ほんとはなんのレビューもいらないほど優れた小説です。★5

2017/10/22

Willie the Wildcat

因果応報。巡り巡って土に返る。共同体の形成から派生する恐れと暴力。差異を見出し、格差が醸成される過程。人間の欲が芽生えだすことが、心のかげり。故の帰郷。野菜畑に生命力と生を再認識するかのような最後の場面が意味深。加えて、ピングや帰郷後に出会った入植者夫婦に、新たな関係性を見出そうとするメイクピースに光!文字通り、平和を作り上げる夢なのかもしれない。一方、国籍を捨てる件に、現代の多様性と国家のあり方も再考。生きる上での共同体と、共同体の上で生きる意味。村上氏の翻訳力の妙かもしれない。

2016/07/06

kazi

内容的には“終末もの”ですね。非常にマッカーシーの“ザ・ロード”やアンナ・カヴァンの“氷”を思い出しました。ディストピアSFに分類してよかったかしら?原因は人類活動による大規模な気候変動?核戦争?原子力発電所の暴走?太陽の活動周期により地球が氷河期に入ったから?ヒントになる描写があったのかもしれませんが、私には読み取れませんでした(^^; とにかく全編を通して荒廃した世界で何とか生き残ろうとする人々の姿が描かれています。極限状態の世界で人間に起きることが非常に細密に描かれており痛々しい。

2021/08/13

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