花見ぬひまの
花見ぬひまの / 感想・レビュー
さなごん
歴史の中の女性。幕末の慌ただしい時代の男女。メールも携帯もない。ただ待つだけ。女は強いと思えた
2015/09/23
rana
「おもしろきこともなき世と思ひしは 花見ぬひまの心なりけり」幕末の女性、しかも尼僧の深い心はしっかりと読み込んでいかないと難しい。大概の本はスーッと読み流して終わるのだが、この1冊は、ページを行きつ戻りつし随分時間がかかった。短絡的にしかものを見なくなってしまって、凛とした尼僧にぞっこん惚れ込んでしまった。諸田さん初読で時代物の奥の深さの一端に触れることができた。「おもしろきこともなき世を面白く 住みなすものは心なりけり」現代では恋多き寂聴さんが凛とした尼僧としてその存在感は大きい。
2013/02/24
としえ
女性視点の恋物語、短編七話。立場・身分の違いや様々なしがらみのせいで、想いを抱いても恋が成就することは少なかったこの時代の、淡い恋心から情熱的な恋情までいろいろな恋の話を書いている。切なくなるような悲恋もいいが、やっぱり幸せな結末を迎える話が好きなので『辛夷の花がほころぶように』が好き。『待ちわびた人』もいい。『心なりけり』で望東尼がおうのを諭す場面が好きだが、まさがおうのに高杉の見舞いに行ってほしいと頼みに来た場面も好き。自分の不愉快な思いよりも夫の気持ちを優先した故の行動だと思うと、頭の下がる思いだ。
2012/12/23
カツイチ
短編集。巻頭「おもしろきこともなき」と最終話「心なりけり」の間に表題「花見ぬひまの」が入るらしい。〇〇好きならピンとくるタイトルにすかさず思わず手に取りました・・・が。墨染めならではの艶かしさ生々しさ・・・イヤじゃない、むしろ肯定的に受け取れる。かつては定型的だった時代小説の女性も、掘り下げて描かれるようになった、のかな。・・・個人的にはおまさが好きなので、武家の妻女たる仮面を捨て意地を通した場面が痛快でした。
2012/12/10
さな
幕末、緊迫した時代下でも男と女は惹かれあい、緊迫した時代だから尚、刹那に求めあう。諸田さん曰く「当時の女性たちが恋はともかく自らの思いに忠実に生きられたのは親の定めた結婚をして子供たちを育て上げ、夫を看取ったのちの晩年になってから、つまり尼になってから」だそうで、酸いも甘いも噛み分けた大人のおんなであるからこそ、同じ思いを背負っている娘たちをかばい、慈しみ、見守ろうとする・・・。情感にあふれた切ない物語集でした。最後の高杉晋作とおうのの話は泣けたわー。
2012/11/23
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