老生
老生 / 感想・レビュー
まさむ♪ね
〈中国では「河」といえば黄河を指す〉巨大な龍を思わせる河のうねり。国共内戦、土地革命、文化大革命、SARS騒ぎ、荒ぶる龍が次々に産み落とす熱狂と狂乱の濁流に人民は為す術もなくのみ込まれていく。小さな農村で貧困にあえぎながらも力強く生きる人々が絞りだす精一杯のペーソスと唐辛子のぴりりと効いたユーモアに乾杯。そして百数十年枯れることなく響き渡る弔い師の神秘の唄声に喝采を。古代中国神話の時代、大陸の東西南北数多ある山河にあまねく息づいていたという怪獣、怪鳥、怪魚たちにも届いたろうか、死者の魂を導くあの弔い歌が。
2016/08/25
ヘラジカ
弔い師が唱う、荒れ狂う現代中国史への哀歌。神話と幻獣がうずまく厖大な中国の大地を舞台としたマジックリアリズム小説と言っても良いだろう。過ぎし激動の時代を、アイロニーとノスタルジーをこめて描いた力強い傑作である。「それは神話の時代だったが、本当に起こったことだったかも知れない。今の私らの物語だって、後代が読んで人話と呼んでくれるだろうか?」。この言葉通り、賈平凹自らの生きた時代を”人話”として語り継ごうとする試みなのだろう。中上健次やラテンアメリカ文学が好きな方にオススメしたい一冊である。
2016/05/12
しゅん
1950~90年代の話が4つ連なっているのだが、とても20世紀の話とは思えない。マスコミなんかも登場するのだけど、すべてが古代の神話のよう。作者が不変的な死生観を注ぎ込んだからだろうか。あっさりと死んでいく様や性的な事象の数々はマジックリアリズム的(というかフォークナー)だけど、即物的な描写はどちらかというとヒップホップのリリックに近い。失敗の物語が幾度も語られるが、語り手の男の弔い歌がすべての無常を祈りに変える。歌はどんなに俗っぽく聞こえても神に属するものなのだ。
2016/10/18
Mark.jr
著者の作品は、いかにも農村を舞台にした泥臭いリアリズムっぽいと思いきや、蝶が花になったり動物が人間に化けたりなどの、非現実的描写がサラッと入るのが、ちょっと変わっています。逆にそれが、中国の地方の現実なのかも...。
2021/12/12
Mann
中国小さな貧しい農村を舞台にした、国共内戦下から共産党支配下での農民たちの苦悩の生活を描いた小説。無秩序な不衛生な暮らしだが、著者は、1953年生まれだというから、実体験なのかもしれない。 全体の話しは、近隣の村で「弔い歌」を歌い歩く人物の語りで進むこともあり、共産党の一党独裁ならばこうだろうな、と言う悲惨な話が延々と(ユーモラス)に続く。権力を握れば欲の塊なのだろう。一党独裁のばかばかしさ、不効率であろうが民主主義の良さを知らしめる力作か。中国で出版が認められているというから、当たり前る話なのでしょう。
2016/07/06
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