鬼才伝説 - 私の将棋風雲録 (単行本)
鬼才伝説 - 私の将棋風雲録 (単行本) / 感想・レビュー
はじめさん
「私は振り飛車と50年戦ってきた」ファッ?! 天才中の天才、加藤一二三九段のデビューから引退に至るまでの、あまたの強敵(とも)らとの死闘と、培われた将棋哲学。/ 19-20-21世紀生まれの3世代棋士との対戦経験。急戦の研究者で流した汗と敗北の涙は、穴熊を組んだ時に、いままで三手で攻めていたのが五手と余裕が生まれるとか。かといって、勝ちやすいからと穴熊ばっかする若手棋士の将棋は面白くないとバッサリ。将棋が芸術になりうるには、やはり見ている方もどっちの攻めが先に動脈かっきるかドキドキするような世界でなくては
2018/09/05
lonesome
―私の考えでは、将棋と一番近いものは音楽である。なぜかというと、無から有が生まれるものだからだ。(p.157) ―私が名人を獲得した時は昼も夜もそこの天ぷら定食をとった。鰻ではなくて天ぷら定食、その点は強調しておきたい。(p.208) ―負けたこと自体は負の部分ではない。勝負に負けたり、何かで失敗したり、人間は生きている間に数多くの挫折を繰り返す。要は、それをどう生かすかだ。(p.218) 口述筆記とのことでいつものひふみん節と違いやけにハードボイルドに感じたけれど、次はどんな将棋を指したのか見たい。
2018/05/15
緋莢
図書館本。〝ひふみん”としてすっかりお馴染みになった加藤一二三が棋士人生を振り返っています。14歳7か月でのプロ入り(藤井聡太に抜かれるまで最年少)、現役は62年10か月、「19世紀、20世紀、21世紀生まれの棋士と対局」、「すべての実力制名人、12人全員との対局経験がある」等、凄い記録がたくさんあります。2015年の竜王戦での渡辺明のある一手について、「今年度ナンバーワンの一手。竜王戦でも最高の絶妙手だ」と言ったが、現地で大盤解説をしていた山崎隆之八段は「この手には感心しました」としか言わない(続く
2018/08/11
R
加藤先生の半世紀を綴った本でした。今でこそ、ひふみんとして柔らかく生きているわけだけども、今更ながらに凄い棋士であったと再認識させてくれる自伝でありました。ひふみん節もあるのだけども、本当に天才だから見える風景のような描写もあり、その立場から見た、現代棋士のありようが、非常に面白くて読み応えたっぷりでした。個人的には、渡辺元竜王への言及が大きいというのが白眉で、また、すべての名人と対局をしたというのも、何気に凄いことだとよなと、見直すという言い方は失礼ながら、思ったのでありました。面白い一冊だ。
2018/04/17
高橋 橘苑
あまりテレビを見ない自分でも、何度も目にしたほどの、今や人気タレント並の有名人となったひふみんの自叙伝。まず全体の文章に漂う明るさと、升田九段言うところの「天性のおおらかさ」に気付かされる。「神武以来の天才」は、確かに名人位の他にも、幾つかのタイトルを奪取した実力棋士ではあった。だがしかし、大山・中原といった様な時代を創出したほどの実積を残せなかったのは、その性格的な鷹揚さが遠因だったかもしれない。そうではあるけれども、この自伝からは、溢れるほどの充実した棋士人生を歩んだひふみんの人となりが伝わってくる。
2019/03/05
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