ある作家の夕刻-フィッツジェラルド後期作品集 (単行本)
ある作家の夕刻-フィッツジェラルド後期作品集 (単行本) / 感想・レビュー
starbro
久々のスコット・フィッツジェラルド、村上春樹/編訳ということで読みましたが、今回は、頭にあまり入ってきませんでした。作品群の雰囲気は味わいましたが、80年前の作品だからか、短編集だからからでしょうか。
2019/07/20
ケイ
村上春樹編訳。春樹氏のフィッツジェラルドのロマンティシズムという表現があるが、私は切なさとやるせなさを感じる。それに、弱さと憧れ。中身のないお金持ちの若い男女の赤裸々さには目をそらしたくなるが、意気が吐き出されている作品のもつ美しさと底力にはため息が出る。若い才能ある飲んだくれが悲しくも美しい余韻を残す時は、そばにいるのはデイジーではない。『アルコールに溺れて』『フィネガンの借金』の洒脱さは癖になる。『風の中の家族』まさに傑作。『失われた10年』冴えとキレ。言わずもがなの『マイロストシティ』(続く)
2019/08/24
ケロリーヌ@ベルばら同盟
村上春樹氏が1881年に『マイ・ロスト・シティ』を翻訳・出版したのは、自身が小説家としてデビューしたのとほぼ同時期。以来こつこつと翻訳を続け、フィッツジェラルドといえば『グレート・ギャツビー』というお寒い認識に変化を齎した氏の功績は大きく、感謝の念に堪えない。鮮烈なデビューからその早すぎる死まで、20年程の執筆活動。絶頂期に於いてすら、藤色とバラ色に染まった空の下摩天楼の狭間で号泣した、純粋で不器用過ぎた時代の寵児には、晩年・円熟といった言葉はそぐわない。当に『夕刻』燦然と輝き、同時に儚く、そして寂しい。
2020/01/11
R
短編数点とエッセーを集めた一冊。作者が辛い時期に書かれたものだそうで、内容が確かに暗いというか重いけども、最後にわずかながら希望めいたものが見える物語が続く。正直、よくわからんという感想なんだが、退廃的とは違う雰囲気を物語から察するのが正しい読み方なんだろうか、話の筋というのがさっぱり頭に入ってこず、フィッツジェラルドがなんたるか、その功績や歴史を知らないと楽しめないんじゃないかと思ってしまった。変化を望むというか、何か変わろうという決意と踏み出す瞬間を描いていたという印象が残った。
2019/12/11
syota
読友の方のレビューで知った本。短編とエッセイ計13編を収録している。挫折と諦念、悔悟、自嘲といったほろ苦い思いが、淡々とした語り口で綴られている。小説の中では『風の中の家族』がひときわ印象的だ。酒に溺れ人生を棒に振った医師が、災害を契機に再び立ち上がる。そう、やり直すのに遅すぎることはない。しかし最も刮目すべきは『壊れる』『貼り合わせる』『取り扱い注意』のエッセイ3部作だろう。作者が長年苦しんだ”魂の漆黒の暗闇”とそれによる自身の変化を克明に綴っている。名作『夜はやさし』の主題にもつながる渾身の力作だ。
2020/03/05
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