武田百合子対談集 (単行本)
武田百合子対談集 (単行本) / 感想・レビュー
どんぐり
令和の時代に入って、武田百合子の新刊を読むことはないと思っていたが、これは雑誌掲載から再録した対談集。『あの頃』以来、懐かしい女性に再会したような気がするのは、この著者の愛読者なら誰しも思うことだろう。ゲストはすでに鬼籍にはいった深沢七郎、吉行淳之介、岸田今日子、それにいまも健在の金井久美子・美恵子姉妹。5つの対談からは、『富士日記』を読んでいるかのようないくつかの情景が想起される。「山荘の壁に掛かっている麦わら帽子、暖炉のそばに置いてある長靴、夜寝ていると、天井の太い梁に腰掛けて足をぶらぶらさせているよ
2020/01/27
chanvesa
富士山荘に向かう道中、道路脇に倒れている男を見て車を停めて、様子を聞こうとする百合子に、泰淳が「そんなことをするおまえがいやだということも入っているし、そんなことはいやだということも入っていたと思う。理由は言わないで、黙って暗い目つき(46~47頁)」で百合子を見た、この箇所が印象的。深沢七郎の「人を助けるとか、お経をあげてご利益があるとか、そんなことにもうなんの意味もないということを、武田先生はよくご存じ(48頁)」ということも納得。
2020/03/22
もりくに
武田百合子さん一家が好きだ。夫の泰淳さんの中国文学への深い造詣に裏打ちされた重厚な「文学」は、若いころ愛読した。娘の花さんの「眠ったような」街を撮ったモノクロの写真は、とても素敵だ。冒頭の写真はもちろん彼女。ご機嫌な百合子さんと、足元に纏わる愛猫。写真に添えられる文章も、さすが二人の愛娘。百合子さんにたどり着くまで言葉を要したが、夫に度々促されて、いやいや書き始めたのが、あの「富士日記」。スゴイ!この本は、百合子さんと気の置けない人達との対談。深沢七郎さんに、金井美恵子姉妹、そして吉行淳之介さん。 (続)
2020/02/13
ぞしま
口述筆記の描写が興味深い。 金井姉妹との鼎談がよかった。怖いとも言えるかしら。 吉行淳之介との男と女な感じの対談は、時代もあるのか、少しどきどきする。 合間に(亡くなってしまった夫)泰淳の話が差し込まれてくるが、妙な既視感がある。この話法、語り口はよく知っているような気がする。法事で祖母と叔母と母が話すのをきいているような……。 百合子さんはしゃべる、泰淳は黙り、書く、というイメージは百合子さんが意図的に作ったものなのかな。そんな気も少しだけする。
2020/03/17
更夜
武田泰淳さんの奥さん、百合子さんは小説家ではなく『富士日記』や紀行文『犬が星見た』で有名。だからこの2冊を読んでいないとちょっとわからない部分があります。深沢七郎、金井美恵子、久美子姉妹との鼎談、吉行淳之介、岸田今日子と対談していますが、皆さん、時代もあるだろうけれど話し言葉がきれい。ら抜き言葉もないし、特に最後の岸田今日子さんの敬語、丁寧語の美しさ、吉行淳之介さんの優しい口調が素敵。女三人でかしましい様子がほほえましい鼎談、おおらかな深沢七郎さん。百合子さんは本当に美人なのだと思う。
2021/01/30
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