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囚われの山 (単行本)

囚われの山 (単行本)

囚われの山 (単行本)

作家
伊東潤
出版社
中央公論新社
発売日
2020-06-22
ISBN
9784120053146
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囚われの山 (単行本) / 感想・レビュー

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鉄之助

死者119人、史上最大最悪の山岳遭難事件・八甲田雪中行軍の史実をもとにしたフィクション。歴史雑誌の編集部員が、この事故の陰に隠された当時の軍部の”陰謀”に迫るサスペンス仕立てで一気に読ませてしまう、伊東潤の筆力はお見事! タイトルがいい。八甲田に閉じ込められた遭難者だけでなく、現代に生きる我々も何かに「囚われ」ていないだろうか? 雑誌廃刊の危機や出世争い、はたまた家庭不和……「どうにもならない」と思い込む=囚われに苦しむ編集部員や編集長。我が身にも当てはまる。まさに「人」が四角の中に閉じ込められている。

2021/09/28

旅するランナー

八甲田山雪中行軍遭難事件から120年。月刊誌編集員菅原は、特集号出版の現地調査のため、青森へ向かう。そして、軍部の陰謀・消えたひとりの隊員という、新たな事実を発見する。環状彷徨(リングワンダリング)・矛盾脱衣など、雪山遭難時の現象の描写も興味深く、我々はこの小説に囚われかけます。でも、終盤のあり得ない展開には、天は我々を見放したという無念の思いが込み上げてきます。

2020/09/27

mura_ユル活動

伊東氏は初読み。世界登山史上最大級、199人の犠牲者を出した八甲田雪中行軍遭難事件。歴史雑誌編集者の菅原が史実に埋もれた謎を解き明かす。山の囚われる、山の恐ろしさ。最大岐路、佐藤特務曹長の道案内、もう少しで田代に到達できる期待が判断を曇らせてしまった。完全な情報不足、(道に詳しい)経験者がいない事。軽装備に加え、食事も凍り磁石も効かない中、行軍中の統率、窮地の試行錯誤・方針転換への経緯などは興味深く読むことができた。過去に新田次郎氏の『八甲田死の彷徨』も読んだけれど、伊東氏は読みやすかった。

2021/04/05

ちょろこ

あの歴史に残る“八甲田山雪中行軍遭難事件”の一冊。面白かった。この事件の特集企画担当になった編集者がいくつかの謎に迫っていくサスペンス。取材という形式で事件を辿っていく過程は詳細かつ興味深く読ませてくれる。猛吹雪の中全てが裏目に出る虚しさ、不運の連鎖、軍隊という組織に囚われた故の仕方ない選択、苦渋の決断が何度も胸を打つ。そして遭難死した兵士人数の違いに囚われた主人公はその答えを見つけられるのか…終盤は嫌な予感と共に臨場感溢れる描写に心は囚われた。任務完了!涙と共にちょいコケた気分を味わった印象的な作品。

2020/07/17

のぶ

この本が八甲田山の遭難事故の話だと聞き、新田次郎の焼き直しだろうと読み始めたら、切り口が違っていて、面白く読む事ができた。歴史雑誌の編集部員・菅原誠一は、特集企画「八甲田山雪中行軍遭難事件」を担当することになった。遭難死した兵士の数が記録によって違うことに気が付いた。物語は現地で取材に赴き、その事実関係の調査を始める。本作では当時の遭難の悲惨さも迫力を込めて再現されており、真実に迫りくる読み物になっている。後半、取材のため、地元ガイドととともに冬の八甲田に足を踏み入れた部分は、必要なのか疑問を持った。

2020/07/17

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